研究実績の概要 |
・単結晶サファイア基板(r面)上に厚さ約1umの多結晶Mg2Si膜を合成することに成功した。マグネトロンスパッタ装置により始めSi膜、次いでMg膜を堆積させ(逐次堆積法)、900 Pa のアルゴンガス中で2時間の熱処理(200-500℃)を行い、固相拡散でMg2Si膜を合成した。X線回折とラマン分光で結晶性を確認したところ、300-400℃が最適温度であり、Mg2Si (111)面に強く配向した膜が得られた。250℃以下では合成が進まず、500℃では膜の分解・蒸発が示唆された。組成比と膜厚は、別途計測したスパッタ電力-成膜レート特性を基に、電力と成膜時間で制御した。EDSで評価した化学量論比は1:1.98で理論値1:2にほぼ一致した。 ・プラズマ支援による低温合成の可能性を調査するため、13.56 MHz/200 Wの外部アンテナ型ICP 装置を開発した。Arガス1 Paの下で密度 のプラズマが生成された。 ・プラズマ支援によるMg2Si合成の低温化を試みた。上記2のICPプラズマを発生(200 W)させ、また基板を予熱した状態でMg, Siスパッタ装置を同時に動作させ成膜した(同時堆積法)。Mg/Si組成比と膜厚を同時に制御するため、ターゲットと基板との距離、スパッタ電力、成膜時間の3パラメータを制御した。その結果、従来は反応が不十分であった基板温度250℃で明瞭なXRDピーク、ラマンピークが現れ、多結晶Mg2Si膜の合成が確認された。200℃では反応が起こらなかった。よって従来に比べ50℃の低温化が実現したことが分かった。プラズマ支援の効果を特定するため、ICP電力をゼロにして同様の実験を行ったところ明確な違いが現れなかった。すなわち、Mg2Si合成の低温化は、逐次堆積法方から同時堆積法への変更によってもたらされた可能性がある。プラズマ支援効果の研究は28年度も継続される。
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