研究課題/領域番号 |
25400531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
市村 真 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10151482)
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研究分担者 |
池添 竜也 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70582849)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高エネルギーイオン / ICRF波動 / 波動粒子相互作用 / アルベンイオンサイクロトロン波動 |
研究概要 |
GAMMA 10セントラル部においては、イオンサイクロトロン周波数帯(ICRF)の高周波による磁力線に対して直角方向の加熱により、強い温度非等方性を持つプラズマが形成され、この温度非等方性に起因してアルベンイオンサイクロトロン(AIC)波動が自発的に励起される。平成25年度は、真空容器内に設置されたホーンアンテナを用いるマイクロ波反射計により、磁力線方向の固有モードとして励起されるAIC波動の空間構造に関する情報を収集した。複数本の離散した周波数ピークを持つ固有モードとして励起されるAIC波動は、その磁力線方向の空間構造が、プラズマパラメタの上昇とともに変化し、空間2点間で有限な波数を持つ伝搬波から定在波へと変化することが観測されている。また、径方向にも空間構造が存在し、周辺部でその位相が反転することが新らたに観測された。 磁力線方向へのエネルギー輸送に関しては、高エネルギーイオンに着目し、半導体を用いた検出器で磁力線方向と磁力線に直角方向への輸送を計測している。GAMMA 10装置では、上記AIC波動に加えて、プラズマ全体の巨視的不安定性が誘起される。これまでに、ミラー磁場中に捕捉された高エネルギーイオンは、そのミラー反射点近傍において、巨視的不安定性との相互作用により、磁力線に対して直角方向への輸送が起こることが明らかとなっている。この直角方向への輸送と対比して、磁力線方向への輸送に関しては、AIC波動の離散する周波数ピーク間の差周波数をもつ揺動によることが観測されている。さらに、セントラル部両側に位置するアンカー部において、初めてAIC波動の自発励起が観測され、高エネルギーイオンの磁力線方向への輸送が観測された。 今後、アンカー部におけるAIC波動の詳細計測と高エネルギーイオンの磁力線方向への輸送との相関を含めて定量的な解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真空容器内に設置したホーンアンテナにより、マイクロ波反射計を用いたプラズマ内部の高周波波動の空間分布計測が順調に進展したこと、また、プラズマ内部の励起波動であるAIC波動に起因する揺動信号が、磁力線方向への高エネルギーイオン輸送を計測する半導体検出器の信号上に明らかに観測されたことで、本研究課題の主題としている波動粒子相互作用に関しての研究が可能であることが確認された。さらに、AIC波動に関して、これまでのセントラル部における観測に加えて、境界条件が大きく異なるアンカー部での自発励起を確認し、今後の解析に向けての研究が進展したことで、平成25年度に予定した項目が順調に達成されたものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマの温度非等方性に起因して励起されるAIC波動は、セントラル部ばかりでなく、その両側に位置するアンカー部でも励起されることが確認された。AIC波動が、空間的境界条件に強く依存する固有モードであることから、異なる境界条件での波動励起とその波動と高エネルギーイオンとの相互作用を解析することで、より詳細な物理の理解が可能となった。平成26年度は、これまでにセントラル部におけるAIC波動に起因して観測された高エネルギーイオン信号とアンカー部におけるAIC波動に起因する信号に関して、その比較をすることから進める予定である。積極的にプラズマパラメタを変化させることにより、観測されるAIC波動と磁力線方向の高エネルギーイオン信号の相関を詳細に解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題は、平成25年度から平成27年度までの研究期間である。平成25年度は、その最初の年度であり、平成25年度の実験結果を踏まえて平成26年度以降の実験を有効に進めることを目的とした。実験結果の解析に時間が必要であったことと、平成26年度の実験開始が5月期となることから、平成25年度申請した予算の一部の執行を3月期後半から4月期に渡って進めることとなった。 平成26年度4月期前半において、申請額との差額が総額の3%以下まで執行済みである。平成26年度の実験開始に向けて、電気回路部品等、平成26年度申請分と合わせて執行する予定である。
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