研究課題
GAMMA10装置の開放端部に流出する高エネルギーイオンの信号が、中心部において励起されるアルベンイオンサイクロトロン(AIC)波動の情報を含んでいることをこれまでに確認している。観測される信号は、離散的なAIC波動のピーク周波数間の差周波数であり、波動粒子相互作用の観点から、中心部において差周波数を持つ波動の励起の有無の検証が重要な課題となっている。平成25年度までに整備したマイクロ波反射計を用いたプラズマ内部における波動の詳細計測により、プラズマ中に励起される波動と波動間の非線型結合に関する解析を進展させた。中央部のプラズマ内部においては、外部より印加する高周波と上記AIC波動との結合ばかりでなく、AIC波動の離散的ピーク周波数間の差周波数を持つ波動が実際に励起されていることが明らかとなった。さらに、入射マイクロ波の周波数を変化させて磁力線と直角方向(プラズマ半径方向)の空間構造を計測した結果、より中心部において波動間の結合が強く起こることを初めて明らかとした。開放端部において観測される高エネルギーイオン信号上に観測される周波数が、この内部領域で観測された波動間の非線型結合の結果としての低周波波動であることが明らかとなり、磁力線方向へのエネルギー輸送機構の詳細な解析が可能となった。自発励起AIC波動の端損失イオンに及ぼす影響を定量的に見積もるためには、さらに広範囲のエネルギー領域で端損失イオンの振る舞いを計測することが必要である。平成26年度において、マイクロ波反射計のホーンアンテナの増設を行い、中央部に隣接するアンカー部で観測されるAIC波動との比較を可能とし、アンカー部における加熱の効果の解析を反射計を用いた波動計測により進めている。別途進めているエンド部へ流出するイオンの全エネルギー束の計測を活用し、波動粒子相互作用に関する知見を広げていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
プラズマ内部の波動の情報を知ることができるマイクロ波反射計の整備が順調に進展し、その解析の結果として、端損失高エネルギーイオン信号上に観測されるAIC波動の離散的なピーク周波数間の差周波数を持つ低周波波動が、中央部の径方向内側のコアプラズマ領域における波動間の非線型結合の結果であることを初めて明らかとした。さらに、隣接するアンカー部に設置した反射計のデータも得られ始める等の進展がみられた。現状では、アンカー部におけるAIC波動の励起条件の解明とその制御に関して、実験的成果を得るまでに至っていないが、今後の進展が期待できる成果であると考えている。
平成26年度には、別途、開放端部に最も近いプラグ/バリア部にも高周波アンテナを設置し、サイクロトロン共鳴加熱実験がスタートした。中央部と同じ磁場構造を持つプラグ/バリア部における高周波加熱において、新たなAIC波動が励起されることが予想され、波動粒子相互作用研究の幅が大きく拡がることが期待される。また、AIC波動以外のプラズマ内部の高周波波動との相互作用の比較をすることにより、その機構について新しい知見を得て、研究を進展させる予定である
本課題は、平成27年度までの研究期間であり、最終年度に成果をまとめるためには、効率良く準備を進める必要がある。当該年度の実験が平成26年の後半に集中したことにより、実験結果の解析を反映して準備を進めるために一部の執行を平成27年度当初とすることとした。
最終年度の予算は、主として成果発表等の旅費に充当することを計画している。平成26年度総額の約3%の繰り越しであるが、電気回路部品等の消耗品として、有効に活用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件)
Fusion Science and Technology
巻: 67 ページ: 1-6
巻: 67 ページ: 1-3