高速点火レーザー核融合におけるドライバ粒子の伝播制御

2013 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25400539
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 核融合科学研究所
• 研究代表者: 坂上 仁志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (30254452)
• 研究分担者: 城崎 知至 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10397680)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: レーザー核融合 / 高速点火 / 統合シミュレーション / 自己生成磁場 / 磁場圧縮 / 高速電子ガイディング / イオン加速

研究概要

コーン付きターゲットを用いた高速点火レーザー核融合では，生成される高速電子が大きな発散角を持つため，コア加熱効率の著しい低下が懸念されている．このため，構造化されたターゲットによる自己生成ピンチ磁場や爆縮により圧縮された外部印加縦磁場を用いて，高速電子をコアまでガイディングすることや，イオン源としてCH材を用いて生成されたイオンビームにより，コアを補助加熱することが考えられている．
まず，爆縮初期に与えられた外部縦磁場が爆縮によって圧縮される過程について，磁場輸送を考慮した２次元輻射流体シミュレーションを行い，そのダイナミックスを調べた．その結果，圧縮された磁場強度は10kTを超えることが示された．また，磁場による熱伝導の非等方性が，流体力学的不安定性の種となることが明らかになった．
次に，高密度領域における衝突効果を考慮してFIREX-Iで想定される1psパルスを照射した場合の外部印加縦磁場による高速電子ガイディング効果を評価した．その結果，縦磁場は，電子ビーム中心部で弱められるがビームエッジで強められるため，磁場がパイプ構造になることがわかった．そして，このパイプ磁場により，高速電子を比較的長時間ガイドできることが明らかにされた．
更に，イオンビームによる補助加熱について，その実現可能性を検討した．補助加熱に利用するイオンビームの加速機構は，ターゲット後面のシース電場およびターゲット前面のポンドラモーティブ力による．前者のイオン加速機構を使う場合にはCH薄膜を使い，後者のイオン加速機構を使う場合にはコーンチップをCHフォームでコーティングした．そして，統合シミュレーションによりコアの加熱過程を評価した．その結果，イオンビームによる補助加熱により，平均コア電子温度が，電子ビームのみの場合と比較して20~50%増加することがわかった．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コア加熱効率に大きな影響を与える高速電子ビームのコアへのガイディングについて，その役目を担うと期待されている外部印加縦磁場の爆縮による圧縮シミュレーションを行い，磁場強度が評価できた．その結果，ガイディングに十分な強度の縦磁場が得られることがわかった．更に，高速電子ビームの伝播によりパイプ構造の磁場が生成され，ガイディング効果が持続することも明らかになった．
一方， イオンビームによる補助加熱については，イオンビームの生成およびコア加熱過程をシミュレーションし，その特性を評価できた．
超高強度レーザーによって発生する高速電子のスロープ温度は，物理的には（レーザー強度×波長）の自乗でスケールされるので，同じ強度でも波長を短くすると低くなる．このため，加熱用レーザーを短波長化（２ω化）し，加熱効率の良いエネルギーを持つ高速電子を生成することが考えられているが，このシミュレーション解析は十分に実施できなかった．

今後の研究の推進方策

加熱用レーザーから前方伝播の高速電子へのエネルギー変換効率については，レーザーの短波長化（２ω化）による効果を明らかにする．また，現在は直線的な一定の縦磁場を印加して高速電子伝播のシミュレーションをしているだけであるが，それを発展させて圧縮された外部印加磁場の形状・構造を取り入れたシミュレーションを行い，磁場形状および構造によるガイディング効率への影響を評価する．更に，イオンによる補助加熱については，効率良くイオンビームを生成すると伴に，高速電子の伝播を妨げて加熱効率が低下しないようにターゲット構造を工夫する．そして，高速電子だけを用いた場合のコア加熱と比較・検討する．
その他，高速電子が大きな発散角を持つ原因の一つとして考えられているワイベル不安定性の強磁場中での特性を解析し，発散の抑制効果を検討する．また，強磁場中では，レーザーがホイッスラーモードにより高密度プラズマ中に侵入できるので，レーザーから電子へのエネルギー結合効率の上昇が期待できるため，この特性も解析して，その効果を検討する．

次年度の研究費の使用計画

実際に出席した会議が，出席を予定していた会議とは異なったため，旅費の残額が発生した．
連携研究者の追加会議参加旅費として利用する．

研究成果

• [雑誌論文] Computational study of strong magnetic field generation in a nonspherical, cone-guided implosion (2013)
  • 著者名/発表者名: H. Nagatomo, T. Johzaki, A. Sunahara, H. Sakagami, K. Mima, H. Shiraga and H. Azechi
  • 雑誌名: Nucl. Fusion 巻: 53 ページ: 063018
  • DOI: 10.1088/0029-5515/53/6/063018
  • 査読あり
• [雑誌論文] Present status of fast ignition realization experiment and inertial fusion energy development (2013)
  • 著者名/発表者名: H. Azechi, K. Mima, S. Shiraga, S. Fujioka, H. Nagatomo, T. Johzaki, T. Jitsuno, M. Key, R. Kodama, M. Koga, K. Kondo, J. Kawanaka, N. Miyanaga, M. Murakami, K. Nagai, M. Nakai, H. Nakamura, T. Nakamura, T. Nakazato, Y. Nakao, K. Nishihara, H. Nishimura, T. Norimatsu, P. Norreys, T. Ozaki, J. Pasley, H. Sakagami 他11名
  • 雑誌名: Nucl. Fusion 巻: 53 ページ: 104021
  • DOI: 10.1088/0029-5515/53/10/104021
  • 査読あり
• [雑誌論文] Effects of laser profiles on fast electron generation under the same laser energy (2013)
  • 著者名/発表者名: M. Hata, H. Sakagami, T. Johzaki and H. Nagatomo
  • 雑誌名: Laser and Particle Beams 巻: 31 ページ: 371-377
  • DOI: 10.1017/S0263034613000104
  • 査読あり
• [雑誌論文] Simulation analysis of the effects of an initial cone position and opening angle on a cone-guided implosion (2013)
  • 著者名/発表者名: T. Yanagawa, H. Sakagami, and H. Nagatomo
  • 雑誌名: Phys. Plasma 巻: 20 ページ: 102703
  • DOI: 10.1063/1.4826211
  • 査読あり
• [雑誌論文] Optimum design of imploded core plasma for effective fast ignition at GXII (2013)
  • 著者名/発表者名: H. Nagatomo, T. Johzaki, A. Sunahara, H. Sakagami, T. Yanagawa, K. Mima
  • 雑誌名: EPJ Web of Conferences 巻: 59 ページ: 03007
  • DOI: 10.1051/epjconf/20135903007
  • 査読あり
• [雑誌論文] Three-dimensional simulations of asymmetric implosion for cone-guided targets (2013)
  • 著者名/発表者名: T. Yanagawa, H. Sakagami, H. Nagatomo
  • 雑誌名: EPJ Web of Conferences 巻: 59 ページ: 03008
  • DOI: 10.1051/epjconf/20135903008
  • 査読あり
• [雑誌論文] Design of a cone target for fast ignition (2013)
  • 著者名/発表者名: A. Sunahara, T. Johzaki, H. Nagatomo, K. Mima and FIREX project team
  • 雑誌名: EPJ Web of Conferences 巻: 59 ページ: 03009
  • DOI: 10.1051/epjconf/20135903009
  • 査読あり
• [雑誌論文] Fast electron beam guiding for effective core heating (2013)
  • 著者名/発表者名: T. Johzaki, A. Sunahara, S. Fujioka, H. Nagatomo, H. Sakagami, K. Mima
  • 雑誌名: EPJ Web of Conferences 巻: 59 ページ: 03010
  • DOI: 10.1051/epjconf/20135903010
  • 査読あり
• [雑誌論文] Effects of laser temporal profile on fast electron characteristics (2013)
  • 著者名/発表者名: M. Hata, H. Sakagami, T. Johzaki, H. Nagatomo
  • 雑誌名: EPJ Web of Conferences 巻: 59 ページ: 17004
  • DOI: 10.1051/epjconf/20135917004
  • 査読あり
• [雑誌論文] Suppression effects of Weibel instability for fast electron divergence (2013)
  • 著者名/発表者名: H. Sakagami, T. Johzaki, T. Taguchi, K. Mima
  • 雑誌名: EPJ Web of Conferences 巻: 59 ページ: 17016
  • DOI: 10.1051/epjconf/20135917016
  • 査読あり
• [学会発表] レーザー駆動高カレントによる高強度磁場生成時のコイルの輻射流体力学的特性と磁場強度 (2014)
  • 著者名/発表者名: 砂原淳，城崎知至，坂上仁志，長友英夫，三間圀興，Z. Zhe，石原和大，有川安信，藤岡慎介，白神宏之，疇地宏，FIREX project
  • 学会等名: 日本物理学会第69回年次大会
  • 発表場所: 東海大学
  • 年月日: 20140327-20140330
• [学会発表] キロテスラ級磁場のレーザー爆縮への影響 (2014)
  • 著者名/発表者名: 長友英夫，朝比奈隆志，佐野孝好，城崎知至，砂原淳，坂上仁志，三間圀興
  • 学会等名: 日本物理学会第69回年次大会
  • 発表場所: 東海大学
  • 年月日: 20140327-20140330
• [学会発表] 超強磁場下での相対論レーザープラズマ相互作用II (2014)
  • 著者名/発表者名: 城崎知至，千徳靖彦，坂上仁志，三間圀興，砂原淳，長友英夫
  • 学会等名: 日本物理学会第69回年次大会
  • 発表場所: 東海大学
  • 年月日: 20140327-20140330
• [学会発表] イオンビームによる高速点火の補助加熱の統合シミュレーション (2014)
  • 著者名/発表者名: 坂上仁志，城崎知至，砂原淳，長友英夫
  • 学会等名: 日本物理学会第69回年次大会
  • 発表場所: 東海大学
  • 年月日: 20140327-20140330
• [学会発表] 高強度磁場中における電子ビーム不安定性の非線形発展 (2014)
  • 著者名/発表者名: 田口俊弘，T. M. Antonsen，三間圀興
  • 学会等名: 日本物理学会第69回年次大会
  • 発表場所: 東海大学
  • 年月日: 20140327-20140330
• [学会発表] Magnetized Fast Ignition (MFI) and laser plasma interactions in strong magnetic fields (2014)
  • 著者名/発表者名: K. Mima, et al.
  • 学会等名: 1st international symposium on High Power Laser Science and Engineering
  • 発表場所: Suzhou, China
  • 年月日: 20140316-20140319
  • 招待講演
• [学会発表] 外部磁場中のレーザー爆縮の輻射流体シミュレーション (2013)
  • 著者名/発表者名: 長友 英夫，朝比奈隆志, 佐野 孝好, 城﨑 知至，砂原 淳，西口 彰夫,坂上 仁志, 三間 圀興
  • 学会等名: 第27回数値流体力学シンポジウム
  • 発表場所: 名古屋大学
  • 年月日: 20131217-20131219
• [学会発表] 爆縮コア加熱に対する高速イオンの寄与I (2013)
  • 著者名/発表者名: 城崎知至，千徳 靖彦，砂原 淳，有川 安信，藤岡 慎介，白神 宏之
  • 学会等名: プラズマ・核融合学会第30回年会
  • 発表場所: 東京工業大学
  • 年月日: 20131203-20131206
• [学会発表] 高速点火における直接加熱 (2013)
  • 著者名/発表者名: 砂原淳、城崎知至、坂上仁志、長友英夫、有川安信、藤岡慎介、白神宏之、疇地宏、森芳孝、北川米喜
  • 学会等名: プラズマ・核融合学会第30回年会
  • 発表場所: 東京工業大学
  • 年月日: 20131203-20131206
• [学会発表] Magnetized Fast ignition (MFI) and Laser Plasma Interactions in Strong Magnetic Field (2013)
  • 著者名/発表者名: K. Mima, T. Johzaki, J. Honrubia, H. Nagatomo, T. Taguchi, A. Sunahara, and H. Sakagami
  • 学会等名: 23rd International Toki Conference
  • 発表場所: Toki, Japan
  • 年月日: 20131118-20131120
  • 招待講演
• [学会発表] Magnetic field compression in an implosion for fast ignition (2013)
  • 著者名/発表者名: H. Nagatomo, T. Sano, T. Johzaki, A. Sunahara, H. Sakagami, K. Mima
  • 学会等名: 55th Annual Meeting of the APS DPP Meeting
  • 発表場所: Denver, Colorado
  • 年月日: 20131110-20131116
• [学会発表] Direct heating of imploded plasma (2013)
  • 著者名/発表者名: A. Sunahara, T. Johzaki, H. Sakagami, H. Nagatomo, K. Mima, Y. Arikawa, S. Fujioka, H. Shiraga, H. Azechi, FIREX project
  • 学会等名: 55th Annual Meeting of the APS DPP Meeting
  • 発表場所: Denver, Colorado
  • 年月日: 20131110-20131116
• [学会発表] Simulation study of radiation enhancement through an interaction between periodically aligned carbon nanotubes and an intense laser (2013)
  • 著者名/発表者名: T. Taguchi and K. Mima
  • 学会等名: 55th Annual Meeting of the APS DPP Meeting
  • 発表場所: Denver, Colorado
  • 年月日: 20131110-20131116
• [学会発表] 高速点火核融合における高速イオン加熱効果I (2013)
  • 著者名/発表者名: 城崎知至，砂原淳，藤岡慎介，長友英夫，有川安信，白神宏之，坂上仁志，三間圀興
  • 学会等名: 日本物理学会2013年秋季大会
  • 発表場所: 徳島大学
  • 年月日: 20130925-20130928
• [学会発表] 爆縮による外部磁場の圧縮に関するシミュレーション (2013)
  • 著者名/発表者名: 長友英夫，城崎知至，砂原淳，佐野孝好，坂上仁志，三間圀興
  • 学会等名: 日本物理学会2013年秋季大会
  • 発表場所: 徳島大学
  • 年月日: 20130925-20130928
• [学会発表] Suppression of beam merging and hosing instabilities in the magnetized fast ignition (2013)
  • 著者名/発表者名: T. Taguchi and K. Mima
  • 学会等名: 8th Int. Conf. on Inertial Fusion Sciences and Applications
  • 発表場所: Nara, Japan
  • 年月日: 20130908-20130913
• [学会発表] Integrated Simulations for Ion Beam Assisted Fast Ignition (2013)
  • 著者名/発表者名: H. Sakagami, T. Johzaki, A. Sunahara and H. Nagatomo
  • 学会等名: 8th Int. Conf. on Inertial Fusion Sciences and Applications
  • 発表場所: Nara, Japan
  • 年月日: 20130908-20130913
• [学会発表] Magnetized Fast ignition (MFI) and Laser Plasma Interactions in Strong Magnetic Field (2013)
  • 著者名/発表者名: K. Mima, T. Johzaki, J. Honrubia, H. Nagatomo, T. Taguchi, A. Sunahara, H. Sakagami and J. Sanz
  • 学会等名: 8th Int. Conf. on Inertial Fusion Sciences and Applications
  • 発表場所: Nara, Japan
  • 年月日: 20130908-20130913
• [学会発表] Electron Beam Guiding by Strong Longitudinal Magnetic Field (2013)
  • 著者名/発表者名: T. Johzaki, K. Mima, S. Fujioka, H. Sakagami, A. Sunahara, H. Nagatomo and H. Shiraga
  • 学会等名: 8th Int. Conf. on Inertial Fusion Sciences and Applications
  • 発表場所: Nara, Japan
  • 年月日: 20130908-20130913
• [学会発表] Compression of the Magnetic field in a Coned-guided Implosion (2013)
  • 著者名/発表者名: H. Nagatomo, T. Johzaki, A. Sunahara, H. Sakagami, A. Nishiguchi, T. Sano, K. Mima, S. Fujioka, H. Shiraga and H. Azechi
  • 学会等名: 8th Int. Conf. on Inertial Fusion Sciences and Applications
  • 発表場所: Nara, Japan
  • 年月日: 20130908-20130913
• [学会発表] Direct heating of imploded plasma in the fast-ignition scheme (2013)
  • 著者名/発表者名: A. Sunahara, T. Johzaki, H. Nagatomo, K. Mima, H. Shiraga, H. Azechi and FIREX project
  • 学会等名: 8th Int. Conf. on Inertial Fusion Sciences and Applications
  • 発表場所: Nara, Japan
  • 年月日: 20130908-20130913