研究課題/領域番号 |
25410001
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
石山 達也 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (10421364)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水、氷表面 / 和周波発生スペクトル / 分子動力学シミュレーション |
研究実績の概要 |
水は生体分子などの機能発現には欠かせない溶媒である。界面水分子は、分子数層程度の厚みの非常に不均質な環境に存在しており、バルクとは異なった性質を示す。これまで、実験では振動和周波発生(VSFG)スペクトル、理論では分子動力学(MD)シミュレーションを用いて、水界面特有の水素結合構造、配向構造などが議論されてきた。本研究では、MD計算によりSFGスペクトルを直接計算することにより、実験のみでは帰属が難しい界面構造の問題を明らかにしてきた。 今年度の成果としては、まず第一に氷表面の水分子のOH振動の問題解決が挙げられる。実験による水表面のVSFGスペクトルには氷表面に特有の3200cm-1のピークがみられることが既に分かっており、それに対応する水構造は"氷様(ice-like)水構造"と名づけられてきた。ice-likeピークは、生体分子などの界面でも観測されており、その起源の解明は多くの界面水構造に関連する重要な研究とみなされている。しかし、ice-likeピークが、水表面における氷構造の存在を示唆しているのかどうかは明らかではなかった。その理由のひとつとして、氷表面で観測されるVSFGシグナルが3200cm-1の振動数で極端に増大する原因が明らかではなかったからである。本研究は、この原因が氷表面でのOH振動の非局在化、つまり氷表面ではOHが集団的に同位相で振動していることが原因であることをつきとめ、さらにHOD水の場合には振動のdecouplingによりピーク強度が著しく低下する結果を報告した。この成果は、水表面に氷構造そのものが存在するわけではなく、OH振動が非局在化するような水界面特有の構造が別に存在することを示すものであり、それが生体分子の機能発現に何らかの形で関わっている可能性があることを暗示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の「水」のみならず「氷」表面についても一定の成果を報告したため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、水(あるいは氷)と空気との界面のみならず、疎水性液体や生体膜との界面の研究にも発展させることを検討している。あるいは、水表面での構造に加えて「ダイナミックス」研究への拡張も視野に入れている。
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