研究課題/領域番号 |
25410006
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
山本 晃司 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 准教授 (70432507)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 導波路 / テラヘルツ分光 |
研究実績の概要 |
金属導波路の平行平板部分に、微結晶試料を挟み、テラヘルツ時間領域分光測定を行い、微量試料測定の可能性を検討した。測定試料には、テラヘルツ帯にシャープなバンドを持つシスチン微結晶を用いた。アピエゾングリースで分散させることによって、微結晶が平行平板部分に十分に分散されることで、微結晶によるテラヘルツ波の散乱を抑制することが確かめられ、テラヘルツ分光スペクトルの信号対ノイズ比の向上や、テラヘルツスペクトル測定の精度向上を達成した。 つぎに、平行平板部が空気と試料の二層の誘電体で満たされた状態の金属平行平板導波路の伝搬モードの理論的解析を行い、導波路をテラヘルツ波が透過することによる振幅と位相の変化を導出した。また実際に導波路にテラヘルツ波を透過させ、時間波形を検出することで位相の変化と吸収を測定し、理論的および計算機シミュレーションによる伝搬モード解析とよい一致を得た。この結果より、金属平行平板導波路を用いることで、薄膜のテラヘルツスペクトルを測定する手法を実証することができた。 透明導電膜、特に、酸化インジウムスズ(ITO)導電膜を金属薄膜とした金属導波路を作成し、テラヘルツ波の超集束の効果を調べた。ポリエチレンテレフタレート(PET)を基板とした市販のITO被覆PET基板を利用し、これを曲げることで金属導波路構造と類似の構造を作り、テラヘルツ波の超集束効果を確かめた。その結果、ITO導電膜は、テラヘルツ領域において、金属導波路における完全導体としての性能を有しないことが明らかになった。しかし、PET基板が誘電体導波路として機能していることを明らかにし、誘電体導波路の理論解析と実験結果を一致を確かめることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度までに、本申請課題[1]:金属導波路構造の最適化によるテラヘルツ波の超集束効率の向上、課題[2]:金属導波路を用いた、薄膜および微小試料に対するテラヘルツ時間領域分光法の開拓、課題[3]:外部変数を変調した新規なテラヘルツ時間領域分光法の実現に対して、課題[1]、課題[2]に成果を得ることができた。 具体的には、金属導波路の平行平板部分に、微結晶試料を挟み、テラヘルツ時間領域分光測定を行い、微量試料測定の可能性を検討した。測定試料には、テラヘルツ帯にシャープなバンドを持つシスチン微結晶を用いた。アピエゾングリースで分散させることによって、微結晶が平行平板部分に十分に分散されることで、微結晶によるテラヘルツ波の散乱を抑制することが確かめられ、テラヘルツ分光スペクトルの信号対ノイズ比の向上や、テラヘルツスペクトル測定の精度向上を達成した。 透明導電膜、特に、酸化インジウムスズ(ITO)導電膜を金属薄膜とした金属導波路を作成し、テラヘルツ波の超集束の効果を調べた。ポリエチレンテレフタレート(PET)を基板とした市販のITO被覆PET基板を利用し、これを曲げることで金属導波路構造と類似の構造を作り、テラヘルツ波の超集束効果を確かめた。その結果、ITO導電膜は、テラヘルツ領域において、金属導波路における完全導体としての性能を有しないことが明らかになった。しかし、PET基板が誘電体導波路として機能していることを明らかにし、誘電体導波路の理論解析と実験結果を一致を確かめることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
金属導波路の平行平板部分にプラスチックチューブを挿入することにより、外部から液体を移送して流体のテラヘルツ時間領域分光測定が可能であるか、これまでに検討してきた。テラヘルツ波がプラスチックチューブを透過するときに電場波形がゆがむことが問題となっており、その起源についても確定することができていなかった。平成26年度で習得したFDTD計算機シミュレーションを用いて、プラスチックチューブに対するテラヘルツ波の伝搬特性を明らかにする。 平成26年度で達成した金属導波路を用いた微結晶試料のテラヘルツ時間領域分光測定法を、より高周波領域に適用可能であるか検討するため、遠赤外領域分光装置を用いて実験を行い、微量試料に対する低振動領域分光測定法の拡張を検討する。また、金属導波路に電圧を印加することによる、変調分測定法の可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度において、金属導波路に対するテラヘルツ波の伝搬に関する理論的考察およびフリーソフトを利用したFDTD計算機シミュレーションによる研究展開を図ったため、予定よりも経費の使用が少なくなった。また、金属導波路を用いた微結晶試料のテラヘルツ時間領域分光測定では、既存の導波路を用いて初期の検討を行ったため、金属導波路の作成費が予定よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
プラスチックチューブを挟んだ金属導波路に対するテラヘルツ波の伝搬対するFDTD計算機シミュレーションを行うために、展計算機の性能を上げる必要がある。このために、平成27年度生じた使用額を使用する。また、金属導波路を用いた微結晶試料のテラヘルツ時間領域分光測定法を、より高周波領域に適用可能であるか検討するために、遠赤分光装置の集光角に合わせた新規な金属導波路を作成する必要があり、その作成費に経費を使用する。
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