研究課題/領域番号 |
25410008
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
鳥居 肇 静岡大学, 教育学部, 教授 (80242098)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水素結合 / テラヘルツ / 強度 / 協奏的効果 / 理論 |
研究実績の概要 |
分光シグナルを解析するための理論的基盤,特に強度生成メカニズムに関わる理論的基盤の構築は,テラヘルツ分光において特に重要性が高い。本研究では,対象系を「水の純液体」から広げて多くの興味深い液相水素結合系を対象とし,テラヘルツスペクトルの強度生成に関わる「電子と分子運動の協奏的効果」を理論的に解析する。 そのためには,分子運動に伴って起こる「水素結合を介した分子間の電荷移動」を的確に評価する必要があるが,その評価手法として,これまで用いていたものの他に,もう1つ有力なもの(面外双極子微分を利用するもの)が存在することが分かった。そこで,平成26年度は,その手法の電子構造的基礎を確立することとした。その結果,(1) 系内の全ての原子が同一平面上に存在する平面系だけでなく,系の一部分が平面形をとる局所平面系についても,その手法が利用できること,(2) 分子並進運動による分子間の電荷移動は,水分子間のものよりも,ペプチド-水間のものの方が大きく,テラヘルツスペクトル強度に大きく寄与すると期待できること,を明らかにした。この知見を利用したペプチド-水系のテラヘルツスペクトル強度の解析は,平成27年度に継続して行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素結合系のテラヘルツスペクトル強度に寄与する「電子と分子運動の協奏的効果」を解析する上で重要な,新たな展開を得ることができた。今後の解析の進展に繋がる重要な展開が得られたことから,「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後,「蛋白質水溶液の溶媒由来バンドの強度増減の2次構造依存性」「電解質溶液系やイオン液体のテラヘルツスペクトルの強度と形状」について,さらに解析を進める。平成26年度に得られた新たな知見に基づいて,複合的な観点から進める。また,これらに関連して,プロトン共役電子移動系等にも類似の事象が存在することが,最近分かってきているため,これを含めた総合的な解析を進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算サーバに関わる消耗品の一部について,想定より少々長持ちしたものがあったため,わずかな次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は,年度の初期に,予定していた物品の購入のために使用する見込みである。
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