研究実績の概要 |
平成25年度本研究実施状況報告書の計画欄に記載したとおり,分子錯体の究極の姿としてホスト単結晶の中にトラップされたゲスト・ラジカル分子を作成し測定することに成功した.つまり多孔性単結晶中に包接されたラジカル分子のX-線回折像と電子スピン共鳴(ESR)スペクトルの同時測定を行った.配位子と金属イオンで構成されるホスト単結晶中に包接されるゲスト分子が配列することで,ゲスト分子のX-線回折像を得ることを東大の稲熊らが報告した.(Y. Inokuma et al., Nature, 495, 461-467(2013))そこで我々は同じホスト単結晶を用いて,ゲスト分子としてラジカル分子を包接させ,X-線回折像とESRスペクトルを同時に測定した.配位子分子2,4,6-tri(4-pyridyl)-1,3,5-triazine (TPT)に亜鉛イオンを加えて空孔が配列したホスト単結晶を生成し,これに2-Phenyl-4,4,5,5- tetramethyl imidazoline- 3-oxide-1-oxyl(PTIO)をゲストとして加えてPTIO内包のTPT亜鉛単結晶を合成した.このX-線回折像に加えてESRスペクトルを測定した.その結果,室温から液体窒素温度範囲で,鮮明なX-線回折による結晶構造と同時に単結晶ESRスペクトルが得られた.つまり,ESR装置の静磁場に対して単結晶配向の角度を変化させることで,角度依存ESRスペクトルを観測することに成功した. また,京都大学化学研究所・村田研究室との共同研究で得られたHe@C60に,プラズマ放電法によりN原子を追加で挿入することを試みた.その結果得られた試料より窒素原子由来の特徴的なESRスペクトルを観測し,He原子とN原子の異種2原子が内包されていることを確認した.
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