研究課題
サイズや形状などに依存して有機材料の反応性が大幅に異なるナノ構造体、特に単一有機ナノ粒子の物性評価には、時間と空間の分解能を併せ持つ単一なの粒子分光計測手法が最適である。ここでは、①蛍光を発しない現象にも適用可能で、かつサブピコ秒の時間分解能を有する顕微過渡吸収測定装置の開発を行い、②開発した装置を用いてナノ粒子を一つ一つ個別に計測し、サイズや形状などに依存した励起状態ダイナミクスを測定することを目的とした。平成25年度は、従来の透過型の顕微過渡吸収分光測定装置を応用し、ナノ粒子からの後方散乱光を利用することで、透過光測定と比較して、感度が100枚以上向上した。これにより平均粒径40nmの金ナノ粒子を単一ナノ粒子測定条件で行うことが可能になった。平成26年度は、開発した装置が、さらに小さな粒径である20nmの金ナノ粒子においても、従来の透過型の測定装置と比較して、20倍以上高い感度での測定が可能であることを証明した。また有機半導体への応用を試みるために高速・高確度のADボードを導入した。これにより平均粒径200nmのペリレンなの粒子の過渡信号が短時間で高精度に測定が可能であることがわかった。その一方で、測定装置に見合う材料開発も行い、金ナノ粒子と有機半導体ナノ粒子といった異種のナノ粒子同士の複合化にも成功した。平成27年度は、ペリレンナノ粒子のサイズと光励起緩和過程との相関を調べた。その結果、サイズ形状が小さくなるにつれて、光励起緩和過程(モノマー励起状態からエキシマー形成過程)が速くなることを見出した。また複合化したナノ粒子の測定を行い、金ナノ粒子から有機半導体ナノ粒子へ電子移動が起こっていることを示唆する結果を得た。以上の結果より、単一有機ナノ粒子を対象とした顕微過渡吸収測定装置の開発に成功し、今後様々な材料への応用展開が可能になった。
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J. Phys. Chem. C,
巻: 120 ページ: 1170-1177.
10.1021/acs.jpcc.5b08504
http://www.ach.ehime-u.ac.jp/anachem/search.html