研究課題/領域番号 |
25410025
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
優 乙石 国立研究開発法人理化学研究所, 杉田理論分子科学研究室, 研究員 (90402544)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 高圧 / 分子動力学 / 水和 / 部分モル体積 / 細胞環境 / 分子混雑 |
研究実績の概要 |
本研究は、溶液中のタンパク質の体積的寄与を、液体の統計力学理論と全原子モデルを用いた分子動力学(MD)シミュレーションによって理論的に調査する。これにより高水圧が細胞内のタンパク質機能に与える影響などを分子レベルで明らかにする事を目的としている。 当該年度は前年度に引き続き生体分子体積計算プログラムの高速化と改良を行った。これについては、さらなる高速化と細胞環境モデルなどの大規模系への拡張性を目的に、計算の並列化を進めた。系を複数の空間に分割し、各部分空間をさらに小さいセルに分割する階層的空間分割法を採用した。部分空間とセルの計算はそれぞれ分散メモリ型並列計算ライブラリ(MPI)と共有メモリ型並列計算環境(OpenMP)によって並列化する、ハイブリッドMPI/OpenMP解析システムを構築した。これにより、同時使用するcpuの数にほぼ比例して計算を加速することが可能となった。東京大学スーパーコンピュータシステムFX-10を用いたベンチマーク計算では、蛋白質の水和体積計算を数千cpuを用いて極めて短時間で計算することが可能となった。この成果については現在学術誌に投稿準備中であるとともに、ソースコードを公開予定である。 MDシミュレーションは、昨年度の継続として小型のタンパク質を用いた分子混雑系モデルや、蛋白質+RNA+代謝物+イオンから構成される細胞環境モデルについて試行し、それぞれマイクロ秒スケールの分子挙動が得られた。シミュレーションから得た原子座標の時系列データから、分子混雑環境や細胞環境内の水和体積や幾何学的体積の解析も終了し。成果の一部を学術誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子体積計算のプログラム開発(高速化、並列化)および、分子混雑環境や細胞環境の体積寄与の調査は順調に進んでいる。一方で、高圧環境が蛋白質の構造、機能にあたえる調査についてはMDシミュレーションのスケジュール上、やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
分子混雑環境や細胞環境におけるタンパク質について、常圧下でのMDシミュレーションが終了し体積要素の解析もほぼ完了している。今後は、このような系に対し、高水圧を付加して各体積要素(水和体積やキャビティーの体積など)がどの程度変化するかを定量的に調査する予定である。可能ならば高圧力による酵素の活性部位の構造やその水和状態の変化などを調査し、生化学的機能との関係を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーションによって出力されるデータサイズが予想より小さかったため、外部記憶装置(HDD)を購入する必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
データサイズの増加によってはHDDを購入する。また必要な学会出張費用に充てる
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