研究課題/領域番号 |
25410027
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小田切 丈 上智大学, 理工学部, 准教授 (80282820)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 2電子励起分子 / 光解離 / 回転準位 / パラ水素 / 非断熱遷移 |
研究概要 |
本研究では,水素分子の2電子励起状態ダイナミックス全体に対する定量的な理解を得ることを目的に,回転準位J=0のみのパラ水素を用いた光解離断面積の測定を目指す。 通常のノルマル水素は偶数回転準位のパラ水素と奇数回転準位のオルソ水素の1:3混合物である。両者の間の遷移は極めて遅く,たとえ極低温に保ったとしても,容易にパラ水素のみのガスを得ることはできない。本研究では,磁性体触媒によるオルソ-パラ変換に基づくパラ水素源を製作し,得られたJ=0のみのパラ水素を用いて光解離実験を行う計画である。 研究計画初年度である平成25年度は、オルソ-パラ水素変換器の設計製作および性能評価実験を行った。磁性体触媒としての硫酸ニッケル六水和物を外径1/8インチのステンレスチューブに充填し,バルブと圧力計を組み合わせてクライオスタットを製作した。製作したクライオスタットを液体ヘリウムデュワーに挿入して極低温に保ち,そこに水素ガスを通してオルソ水素をパラ水素に変換させた。クライオスタットを通した水素ガスと通さない水素ガスを用いてライマンα光子収量スペクトルを回転状態が分離できるほど高分解能で測定し,両者を比較することでオルソ-パラ水素変換の効率を評価した。実験は高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設KEK-PFのBL20Aにて行った。クライオスタットのサイズおよび形状に対する試行錯誤,また,クライオスタットの温度,クライオスタット内のガス圧力など種々の実験パラメータに対する試行錯誤を繰り返した結果,変換効率ほぼ100%までに高めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オルソ-パラ水素変換器の製作に成功し,おおむね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
パラ水素のみの水素ガス源を得ることに成功したが,光解離実験のガスセルが室温のままではJ=0とJ=2の回転準位が混じってしまう。現在,液体窒素を用いてガスセルを冷却するため装置上の工夫を施している最中である。これに成功すると,J=0のみの水素ガスを用いた光解離実験を行うことができる。かつ,ガスセルの温度と圧力センサーの温度が異なることに起因するサーマルトランスピレーションの効果を見積もることができれば,目的とする光解離実験の準備が整う。サーマルトランスピレーションの効果は,過去の文献に実験式が示されているが,主として温度測定の精度に関連する我々の装置の特性を含んだ補正因子を実験で求める計画である。ここまでを今年度中に行うことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算使用において発生した少額の端数を次年度に繰り越した。 消費税率が8%に上昇したため,当初計画より必要額が上昇すると予想されるが,その差額に当てる。
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