研究課題/領域番号 |
25410028
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
田中 秀樹 中央大学, 理工学部, 教授 (40312251)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 銅ナノコロイド / 光還元 / 触媒 / 再生 / 酸化チタンナノ粒子 / 担持 / 窒素酸化物 / 酸化窒素 |
研究実績の概要 |
金ナノコロイドの代替として銅ナノコロイドの合成およびその触媒への応用が期待されている。しかし、銅は金に比べてイオン化傾向が高いため、ナノコロイド化のための還元には環境負荷のある試薬を使わざる得ないことが多く、また還元できたとしても、酸化の影響を受けやすいため、その物理的・化学的特性を保持するのは容易ではなかった。そこで本研究では、環境負荷の低い光還元法による合成法を確立し、また合成したナノコロイドが酸化に対する耐性を持つかどうかについて評価した上で、触媒反応への応用を行うこととした。 前年度、酸化チタンナノ粒子懸濁液を用いることで、非常に効率よくナノコロイドを合成できることを見いだしていたが、平成26年度は、得られたコロイドの酸化に対する耐性についてXRDを用いた評価を行った。その結果、既存のナノコロイドと異なり、本方法で得られたものは酸化物を全く含まない純粋な銅によって構成されることがわかった。また、こうして得られたナノコロイドの触媒反応について、北海道大学地球環境科学研究院との共同研究によって、環境汚染物質の代表格である酸化窒素に対する反応性を調べたところ、反応性に乏しく処理しにくいとされる酸化窒素をより反応性のある二酸化窒素に酸化する媒体として有効であることを確認した。さらに、こうした反応によって失活したナノコロイド溶液に対して光還元を再度施すことによって、ナノコロイドが再生するだけでなく、反応性も再生することを確認した。また、これとは別に、酸化チタン塗布膜に直接銅ナノコロイドを析出させる合成法開発も手がけ始めた。この方法によって、必要な部位にのみナノ触媒を設置して反応制御する道筋をつけた。さらにこうしたナノコロイドの生成過程について、SPring8でのその場XAFS分析の開始にこぎ着けた。こうした成果については、招待講演2件、学会発表2件、論文発表1件を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は、合成した銅ナノコロイドのキャラクタリゼーションと実際の触媒反応への応用に取り組んだ。特にXRD測定によって、得られた銅ナノコロイドが、全く酸化物を含まない状態で存在することが確認できた。また北大との共同研究を開始させ、具体的に窒素酸化物に関連する反応性の検討を行った。中でも、一般には反応性に乏しい酸化窒素を活性化させる反応への適用を見いだしたこと、また反応によって失活したナノコロイドを再生できることまで確認できたのは、予想以上の収穫であった。また生成過程の詳細を分析するのに当初計画にはなかったが、より最適なSPring8との共同研究について具体的に平成27年度5月から実際に測定を開始できる目処を立てた点も想定以上の進展といえる。
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今後の研究の推進方策 |
銅ナノコロイドの合成法については、生成効率が非常に高いことがわかった酸化チタン懸濁液中での検討を続けると共に、反応触媒としての応用に適していると考えられる、平成26年度に新たに見いだした酸化チタン塗布膜への直接合成法の検討も本格的に行う。またこれらの合成過程については、SPring8との共同研究によるその場XAFS測定による生成過程の解明も並行して行う。反応触媒の検討については、特に社会的意義の高い窒素酸化物に関する反応を主軸において検討する。この点は北大との共同研究を継続して行い解明に努めるとともに、ガスクロマトグラフィーを用いた定量分析法も併用することで解明を行う。 これらの研究には、懸濁液中合成に1名、塗布膜合成に1名、生成過程解明に1名、触媒反応探索に2名の学生とともに実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当実験課題の遂行にあたってはナノコロイドの高濃度合成が不可欠であるが、当初見込んでいた以上に非常に効率のよい酸化チタンナノ粒子による合成法が開発でき、加えてこれを塗布した薄膜に直接析出させる方法を開発することで、触媒化プロセスまで簡略化できた結果、当初見込んでいた合成装置の多重化を行う必要性がなくなったため、より有効に研究資金を活用するため、次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに取り組んでいる触媒反応評価のためのガスクロ分析システムの構築、およびSPring8との共同研究で用いる高輝度X線用の分析装置ならびに合成処理システムへ投資する。
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