金ナノコロイドの代替として同ナノコロイドの合成およびその触媒への応用が期待されている。しかし、銅は金に比べてイオン化傾向が高いため、ナノコロイド化のための還元には環境負荷のかかるヒドラジン等の過激な試薬を使わざるを得なかった。また還元できたとしても反応性の高さから酸化の影響を受けやすく、純銅ナノコロイドとしてその物理的・化学的特性を保持することは困難であった。そこで本研究では、環境負荷の低い光還元法を用いた合成法確立を目指し、また合成したナノコロイドの酸化耐性に関する評価を行った上で化学反応への応用を行うことを目指した。 前年度までに、層状粘土化合物の一種であるカオリナイトを用いると、純銅のナノ粒子が合成できるだけでなく、その純銅状態を6ヶ月以上も保持できることを見出していた。この件で論文投稿した所、酸化状態の確認が不十分(アモルファスの考慮が不足)との指摘を受けたため、工学院大の奥村先生との共同研究でSPring8を利用したXAFS測定を行いこの点をクリアして、出版にこぎつけた。同じく前年度までに手がけていた酸化チタン薄膜上に銅ナノ粒子薄膜を形成する研究成果についても論文投稿した。査読意見でこの系は仕込みの銅イオン濃度とは無関係な非常に高効率な0次反応ではないか、との指摘を受け、改めて反応機構などの解析を行い直し、論文出版にこぎつけた。一方、カオリナイトとは別種の層状粘土化合物であるサポナイトについて新たに検討を行った所、カオリナイトとは対照的に、非常に粒径の小さい反応性に富んだ銅ナノ粒子が得られることがわかった。これはサポナイトの剥離しやすくまた銅イオンを保持しやすい効果に由来することを見出した。こうした成果について、論文発表2件、海外招待講演1件、学会発表6件を行った。
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