研究実績の概要 |
昨年度の研究成果を踏まえて計画した課題に対して,本年度は下記の成果を得た。 1.カリックス[4]アレーン(CA)結晶を用いた,芳香族位置異性体に対する競争的包接実験を懸濁法により行った。その結果,クレゾール,ニトロトルエンなど,種々の二置換芳香族異性体の混合液から,特定の位置異性体を高選択的に包接できることを見出した。また,チアカリックス[4]アレーン(TCA)結晶を用いたメチルアミン類の包接について精査した結果,ジメチルアミン/トリメチルアミンを含む溶液からの競争的包接実験における選択性スイッチングの機構を,溶液中のゲストの会合状態ならびに,包接結晶の生成速度や熱力学的安定性の差から,説明できることがわかった。 2. TCAの有機分子包接結晶からのホスト結晶の再生における機構を調査した。その結果,TCAの有機分子包接結晶をヘプタン中で加熱した場合は溶解-結晶化のプロセスにより自己包接構造をとるゲストフリーのTCA分子結晶が得られることがわかった。一方,メタノール中で加熱攪拌した場合は,メタノール包接結晶の生成を経由して,TCAが一次元カラム構造をとる新しい多形結晶が得られることを見出した。 3. 2,2’-チオジフェノール骨格を有するジカルボン酸誘導体を用いて,塩基性化合物の異性体をゲストとした競争的包接実験を種々検討した。その結果,4-メチルシクロヘキシルアミンのシス/トランス異性体混合物を含む溶液中から,トランス体を高選択的に包接することに成功し,その機構をX線結晶構造解析から解明することができた。
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