研究課題/領域番号 |
25410033
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石塚 智也 筑波大学, 数理物質系, 講師 (20435522)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポルフィリン / フラーレン / X線構造解析 / π-π相互作用 |
研究実績の概要 |
本年度は、お椀型に歪んだ四重縮環ポルフィリン亜鉛(II)錯体と、お椀型の曲面形状を持つフラーレンとの会合挙動を、単結晶X線構造解析、および吸収スペクトル測定、1H NMR測定により検討した。 本研究では、四重縮環ポルフィリンの溶解度を向上させるために、縮環ベンゼン環のパラ位にメシチル基を導入した、四重縮環ポルフィリン1を用いた。軸配位子にピリジンが配位した四重縮環ポルフィリン1-pyは、単結晶X線構造解析により、ドーム型に歪んだ構造を持つことが明らかとなった。ポルフィリン中心の48原子の最小二乗面からの平均距離は0.238 Åだった。また中心の亜鉛はお椀の頂点の方向にあり、最小二乗面との距離は1.342Åだった。 結晶中で、フラーレンC60およびC70と、1-py : fullerene = 2 : 1錯体を形成することが明らかとなった。この2:1錯体の結晶構造中において、軸配位子により誘起された1-pyのお椀型凹面と、フラーレンの凸面が一致していた。 さらに紫外可視吸収スペクトルを用いたJob plotから、o-ジクロロベンゼン溶液中において、C60、C70ともに2 : 1錯体を形成することが示された。また、吸収スペクトル変化から求めた1-pyとC60およびC70との2 : 1錯体のo-ジクロロベンゼン溶液中での全生成定数は、(1.3 ± 0.3) × 10 7 M -1、および(2.9 ± 0.2) × 10 7 M -1であり、テトラフェニルポルフィリンなどの平面性ポルフィリン単量体に比べ、溶液中で強い相互作用を示した。 次に、溶液中における会合体の構造を詳細に検討するために、1H NMR滴定実験を行った。その結果、フラーレンの濃度が増大するにつれて、ベータ位のシグナルは、高磁場シフトを示し、メシチル部位のオルト位メチル基は大きく低磁場シフトしました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたお椀型に歪んだポルフィリン誘導体とフラーレン類との相互作用を明らかにした。また本研究の研究対象である四重縮環ポルフィリンに関して、目的に応じた種々の誘導体を高収率で合成することにも成功しており、今後、行う計画の配位子の酸化還元活性と、中心金属の反応性を組み合わせた機能創出に取り組むための準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、例外的に高いHOMOを有する四重縮環ポルフィリンに、様々な遷移金属を導入し、配位子の酸化還元反応と金属の反応性を組み合わせた展開を計画している。具体的には、外縁部の縮環構造により、還元電位が上昇することが分かっている、四重縮環ポルフィリン誘導体を配位子に用い、中心の遷移金属イオンと配位子間の原子価互変異性を含む特異な電子状態を創出し、それによって新しい触媒機能性や物性を発現させる計画である。
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