研究課題
ポルフィリンの外周部に縮環構造を導入すると、π共役系の拡張に伴うHOMO準位の上昇とLUMO準位の低下が起こり、縮環構造を含まないポルフィリンと比べて、酸化及び還元反応が容易に進行することから注目されている。本年度は、外周部に4つの五員環縮環構造を有するポルフィリン誘導体、QFPのコバルト(II)錯体の合成を行った。単結晶X線構造解析の結果、Co(II)-QFP錯体はTHFが二分子軸配位した六配位錯体であることが示された。また、THF中における電気化学測定の結果、7本の可逆な酸化還元波が観測された。酸化剤として[Ru(III)(bpy)3]3+ を用いた滴定実験において、ESRスペクトルで反応を追跡したところ、Co(II)種に特有のシグナルが、一等量の酸化剤の添加で消失し、二等量の酸化剤の添加では、g = 1.996に有機ラジカルに特有のシグナルが観測された。以上のことから、Co(II)-QFP錯体の電気化学測定において、+0.12、+0.54 V vs Fc/Fc+に観測された酸化還元波を、それぞれCo(II)/Co(III)、およびQFP配位子の第一酸化過程と帰属した。また、Co(II)-QFP錯体のTHF溶液にピリジンを添加した際には、電気化学測定において、Co(II)/Co(III)の波が測定範囲から消失した。ESRスペクトルにおいても、Co(II)種に特有のシグナルが消失し、新たに有機ラジカルに特有のシグナルがg = 2.0034に出現した。このことは、Co(II)中心からQFP配位子への分子内電子移動が進行したことを示唆している。
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