昨年度は、溶媒および対アニオンのΔGに及ぼす影響を明らかにした。今年度は、温度可変による熱力学的パラメーター、ΔHおよびΔSを求めた。さらに、ピリジン環に種々の置換基を導入し、置換基のΔGに及ぼす影響を明らかにした。 まず、種々の重溶媒を用いて温度可変1HNMR測定を行い、メチレン基のカップリング定数からAおよびB二つの配座の存在率を決定しΔGを求めた。ΔGと温度とのvan’t Hoffプロットから、ΔHおよびΔSを求めた。その結果、極性溶媒中では、ΔHが小さいのに対し、非極性溶媒中では大きな値となった。このことから、ΔGの溶媒効果の原因が、ΔHに依存していることを明らかにした。また、対アニオンの違いは非極性溶媒中ではΔH およびΔSに影響を与えたが、極性溶媒中では影響が小さいことがわかった。 ピリジン環上の置換基は、ピリジン環の電子密度にそれぞれ異なる影響を与えるため、配座間の平衡に大きな影響を与えるものと考えられる。そこで、置換基を有する誘導体を3種合成した。無置換体の分子天秤を基に、N-オキシド体を合成し、4―位を塩素化することで4-クロロ体を合成した。さらに、これをジメチルアミノ化することで4-ジメチルアミノ誘導体を合成した。これらの誘導体のΔGを求めた結果、大きく異なる値となることが明らかになった。電子吸引基は相互作用エネルギー(ΔG)を大きくする一方、電子供与基はΔGを小さくすることがわかった。これはカチオン-π相互作用が、静電相互作用が主たる相互作用であることと一致する。また、N-オキシド体は分子全体に電荷を持たないため、ΔGが小さくなったと考えられる。
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