研究課題/領域番号 |
25410039
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
廣戸 聡 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30547427)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歪み / ポルフィリン / ヘリセン / キラル発光 |
研究実績の概要 |
H26年度は前年度合成を達成したねじれたポルフィリン二量体を用いてさらなるねじれをもつ分子の合成を行った。具体的にはねじれたポルフィリン二量体をアミノ化し、酸化することで目的の四量体を良好な収率で得ることに成功した。大阪大学の久木助教の協力のもとX線構造解析に成功し、四量体が一方向にねじれた構造をもつことを明確に同定した。その結果、これまで報告されている中で最大のねじれ角をもつ分子であることが判明した。さらに、多量化に伴いねじれの反転の活性化障壁が高くなっていることをNMR測定により明らかにした。この結果は高分子ではよく知られている例であるが、π共役分子では初めて観測された現象である。以上の成果は米国化学会誌J. Am. Chem. Soc.に発表し、有機合成として優れたな成果であるとしてSynfactでハイライトされた。 また、アントラセンを出発原料として用いることにより高発光性ヘリセンの合成にも成功した。アントラセンにヒドロキシを導入し、酸化することで通常不安定である脱芳香環化したジケト二量体の安定単離に成功した。さらにこれを前駆体として高度な歪みをもつオキサヘリセンの合成を達成した。いずれの反応も室温で行っており、低温でπ共役平面を曲げる反応を開発したと考えている。オキサヘリセンは優れた発光特性を示し、高いキラル発光特性を持つことを明らかにした。さらに、固体でも優れた発光特性をもつことを見いだした。以上の成果は英国化学会誌Chemical Communications誌に発表した。 さらに、高度な歪みをもちこれまで合成が困難とされてきたアザバッキーボウルの合成に挑戦した。その結果、合成に成功しX線構造解析によりそのお椀型構造を明らかにした。この成果は第95回日本化学会春季年会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H26年度は当初の計画の目標の一つであったねじれ分子の多量体の合成を達成することができた。さらに、ねじれた分子およびヘリセンの思わぬ機能性発現を見いだし、さらなる発展が期待できる成果を出すことができた。また、当初の研究計画では挑戦的なテーマであったお椀型分子の合成にも早期に成功した。以上の結果は、当初3年で達成する目標として設定していた成果の予想を超える進度であり、さらなる研究の発展を期待できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は合成したねじれおよび歪み分子の機能性を追求する。ねじれたポルフィリン多量体についてはさらなる多量化による可溶性分子ワイヤーの創出、および生体関連物質としての応用など機能性を重視した研究の推進を行っていく。また、ヘリセンについては光による変換が可能な分子および金属錯化の多彩な分子を用いて磁性および光物性にすぐれた歪み分子の創出を行う。また、開発した合成法を用いたさらなる大きな歪みを持つ分子の合成を継続して行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に必要な消耗品についていくつか、申請時に見積もりした予定額より大幅な価格の改定が行われ、購入を見送ることが多くあった。これらの品目については、研究費の次年度の繰り越しを行うことにより購入を行いたいと考えた。このため、予定額との差違が生じ次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度繰り越しの金額と合わせ、研究遂行に必要な消耗品を購入したいと考えている。本報告書に記載した通り、進行が予定よりも早く進んだだめ、研究のさらなる促進のための新たな共同研究・打ち合わせに係る旅費に使用することも考えている。本年度は最終年度であるため、本研究目的推進のために有効に活用したいと考えている。
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