研究課題/領域番号 |
25410040
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
谷 敬太 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60207165)
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研究分担者 |
久保埜 公二 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00269531)
森 直 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70311769)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カルバゾール発色団 / カルバゾロファン / シクロファン / 面不斉 / カルバゾールポリマー |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続いて[3.3](3,9)カルバゾロファン類の合成を行い、キラルカラムによる光学分割の最適条件を検討した。面不斉を持つ部分重なり型[3.3](3,9)カルバゾロファンの3位をニトロベンゼンスルホンアミドで架橋したラセミ体は、展開溶媒をジクロロメタン:ヘキサン=2:1でキラルカラムにより分離精製することにより1時間当たり6mgのラセミ体を光学分割できることがわかった。 ポリ(N-ビニルカルバゾール)に代表されるようにカルバゾール誘導体は優れたホール輸送材料として多用されているが、ポリマー中におけるトラップサイトの存在がホール移動を妨げていることが指摘されている。その解決法として我々はトラップサイトが存在しないと予想されるカルバゾロファン誘導体のポリマー化を提案している。カルバゾロファン誘導体に重合基を導入する経路を開発するため、そのモデル系として2架橋系[3.3] (3,9)カルバゾロファンの9位の架橋を切断したN-アルキル-3-カルバゾリルメチル部位を一つ有するアクリルアミド体の合成を行った。このモデル系のアクリルアミド体のラジカル重合の反応条件を検討することにより、ポリマー化が進行することを見出した。さらに重合条件を詳細に調べた結果、N-アルキル基の鎖長が生成するポリマーの分子量に大きく影響することを明らかにした。次に、よりカルバゾロファンの構造に近いN-アルキル-3-カルバゾリルメチル部位を二つ有するアクリルアミド体の検討も行い、この場合には単量体の溶媒に対する溶解性が大きいほど生成するポリマーの分子量が大きくなることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルバゾールの二量化に伴う種々の物性を調べるのに適した[3.3](3,9)カルバゾロファン類の合成は順調に進んでおり、ニトロベンゼンスルホンアミド架橋体については従来よりも短時間で大量の光学分割を行う条件が確立できた。 カルバゾロファンポリマーを合成するためのモデル系となる(N-アルキル-3-カルバゾリルメチル)部位を一つ、あるいは二つ持つアクリルアミド誘導体の合成を行った。条件検討の結果、それらのラジカル重合が可能なことを見出し、さらに、本ラジカル重合に影響を及ぼす構造上の要因を明らかにすることができた。この結果を受けて、カルバゾロファン誘導体に重合基を導入する経路の検討も行っているので、おおむね申請書通りに進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も部分重なり型カルバゾロファン類の大量合成ならびに光学分割を引き続き行い、それらのキロプティカル特性の解明とカルバゾロファン類のポリマー化を行う。 カルバゾロファンのモデル系でラジカル重合が進行したので、この知見を基にしてカルバゾロファン類のラジカル重合を行う。また、モデル系で生成するポリマーの分子量分布を狭くするために、可逆的付加-開裂連鎖移動重合(RAFT重合)の検討を開始する。この結果を受けてカルバゾロファン類のRAFT重合へと展開する。 ポリマーの精製条件も確立し、ホール輸送性に優れたカルバゾールポリマー誘導体を開発する。 さらに、より柔軟な分子構造を有する[3.5](3,9)カルバゾロファン類の合成ならびにそのポリマー化も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の購入を次年度したこと、消耗品費の使用が少なかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
従来の予定に加えて、ポリマー化実験に必要な備品の購入と海外での発表の旅費に使用する予定である。
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