研究課題
拡張π電子系化合物は、その電気化学的特性や光学特性のため機能性材料の活物質として注目を集めている。中でも硫黄を含むπ共役分子であるチオフェンは安定かつ分子修飾が容易なばかりでんく、その特異な性質から注目されている基本骨格の一つである。本研究の目的はそのチオフェンが複数連なったオリゴチオフェンに対してヘテロ原子を組み込んだ骨格の構築とその機能評価である。今回、ビチオフェンがケイ素で架橋したジチエノシロールを合成する新規手法を開発した。これまで一般的にジチエノシロールを合成するためには、二つのハロゲン部位を導入したジハロビチオフェンに対してブチルリチウム等を二当量作用させてジリチオ化し、これにジハロシランを作用させる手法が一般的であった。しかし、この手法は一般的に収率が低く、また複数のケイ素を導入した誘導体を合成するためには、例えば二つのケイ素を導入する時でさえ、四ヶ所を一度にリチオ化し、不安定なテトラリチオ化体を経由させる必要があった。ところで、最近、國信・高井らはヒドロシリル基を有するビフェニルをロジウム触媒存在下、Si-H/C-H結合切断を経る脱水素型分子内環化反応に供することでシラフルオレンを合成する反応を報告している。本反応を参考に種々検討をおこない、ヒドロシリル基を有するビチオフェンに対し、イリジウム触媒を用いるとSi-H/C-H結合切断を経る脱水素型分子内環化反応が進行し、ジチエノシロール誘導体を与えることを見出した。得られたジチエノシロール誘導体の電気化学的・光学的特性を精査したところ、その骨格によって電気化学的特性・光学特性が共に大きく変化することがあきらかとなった。
2: おおむね順調に進展している
ヘテロ架橋した拡張π電子系分子の新規構築法を開発し、新規拡張π電子系分子の合成及び物性評価に成功したのおおむね順調に進展しているといえる。
現在、本反応の適用できる適用範囲を調べているが、かさ高い基質になると反応が進行しなくなる傾向にある。反応条件をさらに改良し、基質適用範囲の拡大をはかると共に、他のヘテロ原子の導入反応の開発も並行して進めていく。
一部の高価な試薬を購入するのではなく、より安価な原料から合成することにより物品費を抑えることができた。
次年度は最終年度であるので、研究の遂行に全力を尽くすため、物品費と論文の投稿料、成果発表の旅費に重点的に予算を用いる予定である。
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http://achem.okayama-u.ac.jp/reacteng/