研究実績の概要 |
本年度は,ジベンゾシラボリンの類縁体である,ジシラジヒドロアントラセン化合物の合成と構造・物性評価をおこなった。 含ケイ素ラダー型ポリマーは,特徴的なはしご型構造により高い熱的安定性や電気伝導性などの物性が期待できるものの,その合成例は限られていた。当研究室では,オルト位にフルオロシリル基を有するアリールリチウムの二量化により,9,10-ジシラ-9,10-ジヒドロアントラセンが生成することをすでに報告している。本研究ではこの知見をもとに,官能性ケイ素置換ジリチオアレーンを新たに開発し,これを多量化させることで,新規含ケイ素ラダー型ポリマーを合成することを計画した。 モデル反応として,モノリチオアレーンの生成とその二量化反応を検討した。ベンゼン環の両側にフルオロシリル部位を有する前駆体の合成を検討した。まず,1,4-ジブロモベンゼンにリチウムジイソプロピルアミドとクロロシランを反応させることで,1,4-ジブロモ-2,5-ビス(ヒドロシリル)ベンゼンを得た。ケイ素原子上の水素原子をフッ化銀を用いてフッ素原子へと変換することで,1,4-ジブロモ-2,5-ビス(フルオロシリル)ベンゼンを合成した。次にこれを低温下で1当量のtert-ブチルリチウムと反応させてモノリチオアレーンを生成させた。続いて室温へ昇温したところ,目的物である二量体を得ることに成功した。末端ケイ素上のフッ素原子をメチルリチウムを用いてメチル基に変換した。X 線結晶構造解析の結果,分子は平面構造をとることがわかった。紫外可視吸収スペクトルの測定をおこなった。
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