研究課題/領域番号 |
25410049
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西野 宏 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (50145281)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 炭素ラジカルビルディングブロック / 多置換アセトキシジヒドロフラン類 / スピロジヒドロフラン類 / 1,2-ジオキシノール類 / 環状テトラケトンビルディングブロック / スピロ化合物 / カゴ型大環状化合物 / 大環状ナフタレノファン類 |
研究実績の概要 |
Mn(III)特有の炭素ラジカル発生法に着目した従来の炭素ラジカルよりも増炭された新奇炭素ラジカルビルディングブロックの構築を昨年度までに行い、そのビルディングブロックを用いた酸化的ラジカル反応で、多置換アセトキシジヒドロフラン類、スピロジヒドロフラン類および1,2-ジオキシノール類の合成に成功した。環状テトラケトンビルディングブロックを用いたMn(III)に基づく酸化的ラジカル反応では2種類のスピロ化合物の合成に成功し、その生成機構を明らかにすることができた。トリエタノールアミンから得られるビルディングブロックからは窒素をコアとするカゴ型大環状化合物の合成に成功した。また、二置換ナフタレン類をコアとするビルディングブロックからは大環状ナフタレノファン類を得ることに成功し、2D NMRスペクトルおよび単結晶X線構造解析により、正確な構造解析を行った。これらの大環状化合物合成法を「Mn(III)に基づくジヒドロフラン-クリップ反応」と名付け、発表した。メチレン鎖でつながれた末端アミド系炭素ラジカルビルディングブロックからはダンベル型ビス(アザジオキサビシクロノナンカルボキシラート)類の合成を行った。N-アリール-3-オキソブタンアミドビルディングブロックを用いた反応では、転位反応を伴って多官能基化されたピロリジノン誘導体の定量的合成に成功した。アリールアミノオキソエチルマロネートビルディングブロックからはキノリノン類の合成に成功し、それを用いた置換キノリン類への変換法も確立した。1-(ジアリールビニル)シクロアルカノールビルディングブロックを用いた反応では種々のスピロ化合物が得られた。炭素ラジカルビルディングブロックとインドール類を用いた反応から新規ベンゾカルバゾール類の合成に成功した。合成された新奇複素環化合物50検体について、生物活性試験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mn(III)特有の炭素ラジカル発生法に着目した従来の炭素ラジカルよりも増炭された新奇炭素ラジカルビルディングブロックの構築を達成したこと、続いてそこから発生させた炭素ラジカルとアルケン類の反応から多置換アセトキシジヒドロフラン類、スピロジヒドロフラン類、1,2-ジオキシノール類、スピロ化合物、カゴ型大環状化合物、大環状ナフタレノファン類、ダンベル型ビス(アザジオキサビシクロノナンカルボキシラート)類、多官能基化されたピロリジノン誘導体、キノリノン類、ベンゾカルバゾール類などの新奇複素環化合物が合成できたことは研究目的に沿っており、評価できる。ただし、環状テトラケトンビルディングブロックを用いた有酸素酸化反応から得られるラクトン類の生成反応は、ある程度の反応最適化はできた。しかし、依然として反応機構は不明であり、その転位機構は解明できなかった(平成27年度への課題)。また、平成26年度の研究で得られた新規化合物50検体について、生物活性試験を行った。しかし、二次スクリーニングを行うほどの活性を持った化合物は見出せなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度も引き続き、新奇炭素ラジカルビルディングブロックを用いた各種反応に挑戦し、その有用性を検証・評価すると共に新規複素環化合物の合成を行う予定である。特に、環状テトラケトンビルディングブロックからは珍しいプロペランタイプの新規複素環化合物の合成を行う予定である。また、炭素ラジカルビルディングブロックを用いたインドール類との反応からは生物活性を目指した縮環インドール類の合成やスピロインドール類の合成を検討する予定である。また、環状テトラケトンビルディングブロックを用いた有酸素酸化反応から得られるラクトン類の反応を最適化し、依然として不明である反応機構の解明を行いたい。さらに、Mn(III)特有の炭素ラジカル発生法に着目した従来の炭素ラジカルよりも増炭された新奇炭素ラジカルビルディングブロックを用いた反応では溶媒の極性が生成物の生成に影響を及ぼしていることが平成26年度の研究でわかってきた。そこで、典型的は炭素ラジカルビルディングブロックを使った反応における溶媒効果を検討する予定である。最終的に本研究で得られた新奇複素環化合物について、最終年度も引き続き各種生物活性試験スクリーニングを日産化学工業株式会社に依頼する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入に際して、できるだけ格安にしてもらい、消耗品費を節約したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の残額は平成27年度の最終年度における消耗品費に追加して使用する。
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