研究実績の概要 |
Mn(III)特有の炭素ラジカル発生法に着目した従来の炭素ラジカルよりも増炭された新奇炭素ラジカルビルディングブロックの構築を昨年度に引き続き行い、そのビルディングブロックを用いた酸化的ラジカル反応で、多置換アセトキシジヒドロフラン類、スピロジヒドロフラン類および1,2-ジオキシノール類の合成を昨年度に引き続き行った。これにより、これらの合成反応では明らかに置換基効果が見られることが分かった。次に、環状テトラケトンビルディングブロックを用いたMn(III)に基づく酸化的ラジカル反応では2種類のスピロ化合物に加えて新たにジスピロ化合物の合成にも成功し、それらの生成機構をほぼ確立することができた。同様の反応を室温で行うと全く違った反応が起こり、ヘキサヒドロベンゾ[c]クロメントリオンという極めて興味ある化合物が得られた。メトキシナフタレンを置換したブタンジオン類を合成し、1,1-ジフェニルエテン存在下で酢酸マンガン(III)による酸化反応行ったところ、新規ベンゾフロクロメノン類の合成に成功した。この反応は大変複雑で、その反応機構を詳しく調べた。その結果、反応中間体としてビニルベンゾクロメノン類が生成していることを突き止めた。このビニルベンゾクロメノン類を別途合成し、同様の反応にかけたところ、最終生成物のベンゾフロクロメノン類へ変換されることを確認した。最後に、炭素ラジカルビルディングブロックをインドールに置換し、直接酢酸マンガン(III)による酸化反応を行うことで、これまでにない新規反応を発見し、テトラヒドロアゼピノ[4,5-b]インドール-4-(1H )-オン類や4,9-ジヒドロピラノ[3,4-b]インドール-1(3H)-オン類の合成を達成した。合成された新奇複素環化合物50検体について、昨年と同様に生物活性試験を行った。
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