研究課題/領域番号 |
25410051
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
園田 素啓 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (90314400)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多置換ベンゼン / ワンポット反応 / ヘテロ芳香族化合物 / Diels-Alder反応 |
研究実績の概要 |
ベンゼン環上に複数の異なるヘテロ元素官能基を有する化合物は、さまざまな生理活性や薬理活性、導電性や発光性などの有用な物性を示すものが多い。そのため、有機合成化学において多官能性ベンゼンを穏和な条件且つ簡便な操作で合成する方法の開発は広く望まれており、特に新規医農薬品の開発現場からのニーズが高く、極めて重要である。この観点から本研究では、平成25年度までに見出した置換フラン類のDiels-Alder反応と開環芳香族化を組み合わせた多置換安息香酸エステルのワンポット合成法に着目し、その応用展開について検討している。平成27年度は、まず反応機構についての知見を得ることを目的として重水素同位体標識実験を行い、オキサノルボルナジエン中間体からの開環芳香族化によりフェノール性水酸基が生成する際の水素源が、オキサノルボルナジエンの架橋部の水素の転位によるものではなく、系外からのプロトン由来が主であることを確認した。また、平成26年度に見出した臭化オキサノルボルナジエン中間体とアミンとの反応による3-ヒドロキシアントラニル酸エステルのワンポット合成において、導入可能なアミンが比較的塩基性の高い脂肪族第2級アミンに限られること、およびエステル置換基をより嵩高いベンジルエステルに変えることで収率向上につながることを見出した。また、アミンのかわりにアルキルチオールを作用させることにより、少量ながら硫黄官能基を有する3-ヒドロキシ-2-アルキルチオ安息香酸エステルが得られることを見出した。現在、反応条件の最適化ならびにワンポット化、さらに基質の適用限界の解明等について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度において、フラン類と臭化アルキンを用いるワンポット反応に、アミンを後から添加することにより3-ヒドロキシアントラニル酸類が生成する反応の端緒を見出した。基質の適用範囲について精査したところ、第2級脂肪族アミンが効率良く反応することが明らかとなった。また、反応機構の解明に関わる重水素同位体実験や比較実験等を行い、開環芳香族化の際の水素源についての知見を得た。その一方で、チオフェンを出発基質に用いるDiels-Alder反応の条件探索、ならびにヘテロ環内にリンを有するホスホール類の一般的合成法の開発については継続して検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、まず前年度に見出した硫黄反応剤を用いる3-ヒドロキシ-2-アルキルチオ安息香酸エステルの合成について、反応条件の最適化を行うとともに基質の適用範囲を明らかにする。フラン以外の五員環ヘテロ芳香族化合物を用いた物質変換として、チオフェン、あるいはそのオキシドを用いたDiels-Alder反応が生起する条件の探索を行う。また、これまでに見出した反応系を利用した有用物質の合成についても取り組む予定である。これらの計画を推進することにより多置換ベンゼンの簡便合成法の意義を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、フラン以外の五員環ヘテロ芳香族化合物を利用する反応にも着手する予定であったが、チオフェンを出発基質に用いるDiels-Alder反応や、ヘテロ環内にリンを有するホスホール類の一般的合成法の開発は依然としてチャレンジングな課題であり、未だ有用な反応条件を見出すに至っていない。反応開発後の基質展開のために様々な試薬の購入を予定していたが、その費用が残ることとなった。また、研究場所が変わった結果、平成27年度では研究協力者(大学院生)が得られず、予定していた一般有機試薬やガラス器具などの消耗品費が想定より大幅に少なくなった。そのため、研究期間を延長して次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、まずヒドロキシフタル酸エステルを利用した有用物質への更なる変換反応を試みる。さらに前年度より着手しているフラン以外の五員環ヘテロ芳香族化合物を利用する反応ついて、チオフェンオキシドやジオキシドなどに基質を変更して反応の検討を行う。また、生理活性・薬理活性が期待される多種ヘテロ元素含有化合物の誘導体合成を計画し、化合物ライブラリーの構築やその活性評価ための準備を行う。前年度の繰越金をその研究費に充てる予定であり、特に、必要な試薬やガラス器具などの消耗品費に主に充てる予定である。
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