本研究課題の主目的はアセチレンで連結されたドナー・アクセプター色素の合成と、モジュラー合成への適用であるが、これまでにアクセプター部位となる物質の合成とそれを用いたドナー・アクセプター色素の合成を行った。また、ドナー部位として、N-シリルエチニルカルバゾールの合成を行った。文献に従ってエチニルカルバゾールを合成したところ、空気中室温でやや不安定であり、溶液状態では徐々に分解していくことが明らかとなった。分解生成物は未同定であるが、空気酸化により分解していったものと推察される。そこで、末端アセチレンの保護のためにシリル基を導入することとした。シリル基として、トリメチルシリル基を導入することとした。in situで発生させた、エチニルカルバゾールのアニオンに対し、クロロトリメチルシランを作用させたところ、目的通り、トリメチルシリルエチニルカルバゾールの合成に成功した。トリメチルシリル保護を施していない、エチニルカルバゾールに比べ、安定性が向上し、光学的性質を明らかにすることが出来た。このN-シリルエチニルカルバゾールの蛍光スペクトルでは、エキシマー発光とみられる発光が観測された。導入するケイ素置換基を、トリメチルシリル基以外に、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基などに変更し、エキシマー形成の変化について、系統的な知見を得た。
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