研究実績の概要 |
複数回の炭素-水素結合、炭素-炭素結合の切断を伴う環状骨格構築法の開発を行い、5つの新反応の開発に成功した。 (1)置換基を有する無水マレイン酸と内部アルキンを、ロジウム(III)触媒および銅(II)塩存在下、t-アミルアルコール中、120℃で反応させたところ、無水マレイン酸の脱カルボニル化を伴う形式的な[5 - 1 + 2]型環化付加が進行し、α-ピロンを与えた。 (2)1,4-エンインとアリールボロン酸を、rac-BINAPを配位子として持つロジウム(I)触媒存在下、1,4-ジオキサン中、90℃で反応させたところ、1,4-ロジウム移動を経由する環化反応が進行し、1-(アリールメチレン)インダンを与えた。本反応を(R)-MeO-BIPHEPを配位子として反応を行ったところ、ベンジル位に不斉四級炭素を有する生成物を最高92%eeで与えた。 (3)オルト位にβ-アリール-α,β-不飽和エステル部位を有するフェニルボロン酸エステルを、DPPBZを配位子として持つロジウム(I)触媒存在下、p-キシレン還流下で反応させたところ、1,4-ロジウム移動を経由するスピロ環化反応が進行し、1,1'-スピロビ[インダン]-3-オンを与えた。 (4)置換基を有する無水マレイン酸と1,6-ジインを、ロジウム(III)触媒および銅(II)塩存在下、DMF中、140℃で反応させたところ、形式的[5 - 1 + 2]型環化付加によるα-ピロン生成の後に分子内Diels-Alder反応、続く脱炭酸が進行し、多置換ベンゼンを与えた。 (5)1位にアリール基を有する3-(ピリジルメチレン)シクロブタンを、Wilkinson触媒存在下、p-キシレン中、150℃で反応させたところ、炭素-炭素結合および炭素-水素結合の切断、およびその組み替え(メタセシス)が進行し、1-(ピリジルメチレン)インダンを与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は極めて順調に進展し、この1年間に7報の論文を発表することができた。またその内容も、1,4-ロジウム移動(炭素-水素結合切断)を経由するもの、脱カルボニル化(炭素-炭素結合切断)を伴うもの、小員環化合物(炭素-炭素結合切断)を用いるものがあり、得られる生成物もピロン、多置換ベンゼン、インダン、スピロビインダンと多様性にも富んでいた。 (1)の研究では、23種類のピロン、イソクマリンを得ることができた。(2)の研究では、17種類の1-(アリールメチレン)インダンを、うち7種類を光学活性な生成物として得ることができた。(3)の研究では、10種類のスピロビインダノンを得ることができた。(4)の研究では、23種類の多置換ベンゼンおよび1種類の1,3-シクロヘキサジエンを得ることができた。(5)の研究では、15種類の1-(ピリジルメチレン)インダン誘導体、1種類の1-(ピリジルメチレン)テトラリン、および類似反応による生成物(インダノン、1ーテトラロン)を8種類得ることができた。
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