研究実績の概要 |
昨年度、縮環型立体保護基である1,1,7,7-tetraethyl-3,3,5,5-tetramethyl-s-hydrinfacen-4-yl基(以下、EMind基)を3位に有するチオフェンを酸化することにより得られるチオフェン1-オキシド、1-イミド、及びイリド化合物の合成法を確立した。今年度、これら化合物の温度可変13C-NMRを測定し、コンピューターを用いたシミュレーションによる線形分析を行うことにより、3配位硫黄原子のピラミダル反転の活性化エネルギー、活性化エンタルピー、活性化エントロピーを実験的に求めることに成功した。 本研究によりチオフェン1-イミドの反転エネルギーを実験的に初めての決定することができた。 EMind基はチオフェン環に直交すること及び本化合物がもっとも少ないモノ置換チオフェンの誘導体であり、実測不能な母体チオフェンの硫黄置換体にもっとも構造が近いと考えられることから、本実験値はチオフェンの3配位硫黄化合物の反転エネルギーとして今後引用される値になると期待される。 Rind基はその嵩高さによる立体保護効果と立体制御効果が知られていたが、本研究は新たに剛直な構造を生したNMRのプローブとして応用できることを示した点でも意義深い。
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