研究実績の概要 |
1 ビス(シリル)キサンテン誘導体“xantsil”がSi,O,Si型で三座配位した16電子ルテニウム-トリアミノホスフィン錯体を合成し,アリールアルキンと第三級シランとの反応の触媒として用いたところ,芳香環オルト位のC-Hシリル化とC-C三重結合のヒドロシリル化が一段階で起こる二重シリル化反応が進行した。本成果は,C-H結合の活性化を経る前例の無い触媒反応を開発した点で学術的意義が大きい。 2 二座配位(Si,Si型)のxantsilを持つ14電子ロジウム錯体を合成し,その配位構造(歪んだシーソー型)を明らかにした。同錯体を触媒としたジフェニルアセチレンと第三級シランとの反応を室温で行ったところ,芳香環C-H結合の活性化およびC-C結合形成を伴うシリルインデンの生成が,C-C三重結合のヒドロシリル化(シリルアルケンの生成)と競合して起こることを見出した。シリルインデンを与える前者の反応(これまでの報告は一例のみ)は,従来のルテニウムやイリジウムのxantsil錯体を触媒とした場合には進行せず,中心金属の変更により反応の選択性を制御できることが示された。 3 シリルおよびホスフィン配位子部分を含むキサンテン誘導体“xantSiP”がSi,P型で二座配位した,16電子イリジウムおよびロジウム錯体 M(xantSiP)(H)(L)Cl (M = Ir, L = ホスフィン, ピリジン; M = Rh, L = ホスフィン)を合成した。イリジウム錯体(L = ピリジン)と過剰量のヒドロシランとを反応させたところ,Si-H結合活性化とクロロシランの脱離が起こり,xantSiPがmeridional(Si,O,P)型で三座配位したヒドリド(シリル)錯体が生成した。今後,この結合活性化を利用した触媒反応を開発する予定である。
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