研究課題/領域番号 |
25410060
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
島崎 優一 茨城大学, 理学部, 准教授 (80335992)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ニッケル / 高原子価 / 酸化 / フェノキシルラジカル |
研究概要 |
これまでさまざまな金属(II)-salen型錯体の酸化体について研究を行ってきた。Ni(II)-salen型錯体の一電子酸化体はNi(II)-フェノキシルラジカル種であるが、これに軸配位子が配位することでNi(III)-フェノラート種の変換することが知られている。本研究ではさらなる高酸化状態の詳細な電子状態を明らかにするため、異なるキレート環を持つ2つのNi(salen)錯体について、ピリジンが軸配位したNi(III)-フェノラート種を、一電子酸化することで生成する酸化体の性質について検討した。 ニッケル(III)種である[Ni(salcn)(py)2]+、[Ni(salpn)(py)2]+のCVは、自然電位より高電位側に、 [Ni(salcn)py2]+は0.79 V、 [Ni(salpn)py2]+は0.49 Vと、大きく異なる電位に可逆な酸化還元波を示した。そこで、ニッケル(III)種の一電子酸化体を生成するため、電気化学的、1.26 Vに酸化電位を持つ[Ru(bpy)3](PF6)3を酸化剤として用いることで一電子酸化体の生成が確認された。一電子酸化体にフェロセンのような一電子還元剤を加えると、もとのニッケル(III)種へと変化することから、この過程は可逆な電子移動反応であることがわかった。4 KにおけるESRにおいて、酸化前の[Ni(salcn)(py)2]+、[Ni(salpn)(py)2]+はともに典型的なNi(III)に特徴的なシグナルを与えたが、それらの一電子酸化体は、ESR不活性であり、酸化中心が配位子または金属イオンかを特定できなかった。一方、二つの一電子酸化体はともにフェノキシルラジカルを配位基として有していることが共鳴ラマンスペクトルから明らかとなった。現在さらなる電子状態の詳細について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、最も大きな目標として、ニッケル(III)の一電子酸化体についての生成が可能かどうかについての検討であったが、ニッケル(III)の一電子酸化体は比較的安定な化学種として得られることがわかり、その電子状態についても、現在進行中であるが徐々に明らかになりつつあることから、おおむね順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ニッケル(II)の二電子酸化体の結晶化並びにそれらの物性について、XPS、XANESを用いて検討する。また、金属(III)-フェノキシルラジカル種や金属(II)-ビスフェノキシルラジカル種については磁気的性質を明らかにするため、磁化率の温度、磁場変化の測定を行い、その結果とXPSやXANESの結果とあわせ、金属イオンの価数から正確な電子状態を調べる。それらの結果をもとに、より正確な電子分布を求めるため、DFT計算などで検討する。また、単離した二電子酸化体の酸化能について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究遂行に必要な真空ラインを構成する機器類のうち一部について発注が間に合わなかったため、約7万8千円残ってしまった。 前年度の発注が間に合わなかった真空ライン一式の一部の機器を平成26年度のできるだけ早い時期に購入し、実験を円滑に進める。
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