研究課題/領域番号 |
25410065
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 泰之 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 准教授 (10385552)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ロタキサン / ポルフィリン / フタロシアニン / スタッキング / 単一分子素子 |
研究実績の概要 |
メカニカルな結合構造であるロタキサンは、共有結合により構築される構造体に比べて分子の自由度が高いため、新しい素子・素材への応用が期待される分子群である。我々は本研究において、ロタキサン形成反応を利用して、ポルフィリンやフタロシアニンを一次元にスタッキングさせながらプログラム配列化することで、熱、pH、酸化還元などの外部刺激に応答して可逆的に分子機能のスイッチングが可能な単一分子素子のプログラム構築に取り組んだ。 これまでに我々は、4本のジアルキルアンモニウム側鎖をもつポルフィリン (1) 上に4つのクラウンエーテルユニットをもつフタロシアニン (2) を集積した後ロタキサン結合で4重に連結することで、4重ロタキサン型ポルフィリンーフタロシアニンスタッキング会合体 (3) を構築した。さらに我々は、この4重ロタキサン型会合体(3)が4つのアンモニウムカチオンを持つことに着目して、4つのスルホン酸アニオンを持つポルフィリンTPPSとの会合体形成反応を検討したところ、4重の静電相互作用を介して、TPPSが(3)のフタロシアニン上に会合したヘテロ三量体 (4)が得られることが分かった。我々は、本年度、この多重イオン性相互作用を利用した会合体形成反応により、三種の異なる金属イオンをスタッキング三量体内にデザイン通りに配列化できることをしめした。また、電気化学測定により会合体内部におけるコンポーネント間の電子的相互作用の評価をおこなった結果、(4)内部では、TPPSとフタロシアニンとの間に強い電子的相互作用があることがわかった。さらに、上述の4重イオン性相互作用形成反応を利用して、S = 1/2スピンをもつCu2+イオンを決められた数だけスタッキング会合体内部に配列化し、スタッキング会合体全体のスピン状態がどのように変化するかを系統的に評価した。これらの知見は、スタッキング分子型単一分子素子をデザインする上で重要な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究には、三つの段階がある。(1)ポルフィリンおよびフタロシアニンからなるロタキサン型スタッキングアレイ内に、金属錯体をプログラム配列化する手法を開発する。(2)(1)の手法を利用して、目的にかなった金属ポルフィリンー金属フタロシアニンスタッキング分子を構築する。(3)(2)でプログラム構築した分子の機能を評価し、素子のプログラム合成に向けた理論の構築に取り組む。 昨年度の研究において我々は、逐次的な二重ロタキサン形成反応を利用してスタッキング型分子が構築可能であるということを示した。また、本年度の研究では、テトラカチオン性の4重ロタキサン型ポルフィリンーフタロシアニンスタッキング会合体とテトラアニオン性ポルフィリンの4重イオン性会合体形成反応を利用して、実際に異なる三種の金属イオンをプログラム通りにスタッキング会合体内に配列化できることを示した。これらの結果特に、(1)の部分において研究の進展があったことを意味している。 さらに本年度は、上述の手法を用いて、実際に異なる酸化還元電位やスピン状態を持つ金属ポルフィリン(金属フタロシアニン)をスタッキング会合体内に配列化し、そのスタッキング会合体の物性評価をおこなった。これは、上記(2)の段階に研究が進展したことを示している。 この他にも、金属電極表面へのポルフィリン分子の修飾の研究についても着実に進展しており、単一分子素子として機能する分子を実際に合成し、その電気伝導特性を評価する準備が着実に整っていることから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに開発したスタッキング型ポルフィリンーフタロシアニンアレイのプログラム構築法を利用して、単一分子デバイスの候補となるアレイの構築に取り組むとともに、合成した会合体を実際に金電極表面に方向選択的に吸着させ、電気伝導特性を明らかにする段階に着手していく必要がある。そのため、金電極表面に接合するためのリンカーポルフィリンの開発に力を入れるとともに、その構造と電気伝導特性の相関を明らかにした上で、上述のスタッキング分子を金表面に接続し、スタッキングアレイ1分子の電気伝導度測定をおこなって、単一分子デバイスとして機能するアレイの開発を目指す。
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