研究実績の概要 |
アセチルCoA合成酵素のモデル研究:活性中心であるニッケル二核錯体部位にジアミドジチオラート型で配位するテトラアニオン性トリペプチドCys-Gly-Cysのモデルとして、テトラアニオン性N2S2配位子であるmbea (H2mbea = N,N’-(3-Hydrothio-3-methylbutyryl)-o-ethylenediamine)を導入した種々の二核ニッケルモデル錯体を用い、前年度に引き続き酵素反応機構の解明に挑んでいる。前年度はモデル錯体を用いた酵素反応サイクル構築に成功し、NiII-Ni0の還元状態にある酵素活性中心がメチルカチオン、チオラート、COの順で基質と反応し、触媒反応が進行する機構の妥当性を明らかにした。そこで今年度は、生化学研究から提案されているもうひとつの基質作用機序、すなわちメチルカチオンの次にCO、その後チオラートが作用する機構の可能性を探った。酵素還元状態Ni(II)-Ni(0)モデル錯体[Ni(mbea)Ni(cod)](2-) とアセトニトリルの酸化的付加で得られたNi(II)-Ni(II)錯体[Ni(mbea)Ni(Me)(CN)](2-) (1)を用いた。錯体1の末端ニッケル上にはシアノ基が強固に結合しており、チオラートを加えても配位しなかったが、チオラート存在下でCOを加えるとアセチルチオエステルが生成し、酵素モデル反応が進行することがわかった。この結果は、提案されているいずれの作用機序でも酵素反応が進行しうることを化学実験的に示した初めての成果である。
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