本研究題目「再生型有機ヒドリド供給能を有する金属錯体を用いた二酸化炭素の多電子還元反応」において、二酸化炭素改質による化学・電気エネルギー相互変換システムを念頭に置き、自然エネルギーによる光や電気エネルギーを化学エネルギー(有機ヒドリド)として貯蔵可能な錯体分子を開発し、触媒的二酸化炭素多電子還元反応への適用・応用研究に取り組んだ。平成25年度においては、配位子の置換基効果や添加する塩基の塩基性度の違いによって二酸化炭素からギ酸へのヒドリド還元反応速度を制御できることを明らかにした。平成26年度では、水性ガスシフト反応を利用した新奇配位子還元反応(ヒドリド貯蔵反応)を見出し、さらには、2つの有機ヒドリド生成・供給部位を持つ酸化型配位子または還元型配位子を有する両Ru錯体の合成・単離手法も明らかにすることができた。本研究の最終年度である平成27年度では、これまでに得られた知見を総括しながらも、二酸化炭素からギ酸への変換で満足することなく、さらなる還元物質であるメタノールへの変換を志向すべく、合成に成功した標的錯体の分光学・光化学・電気化学的特性は勿論のこと、二酸化炭素へのヒドリド還元能や光・電気によるヒドリド再生能の評価を行った。その結果、還元型配位子同士がC-CカップリングしたRu錯体([Ru(3Me-pbnH)2]2+)としていないRu錯体([Ru(pbnHH)2(CO)2]2+)では、配位子の電気化学的酸化過程(ヒドリド放出過程)に大きな差異があることを見出し、さらには、二酸化炭素雰囲気下において塩基を各錯体に作用させると、それぞれの錯体で反応性が大きく異なることが明らかとなった。
|