研究概要 |
本研究では直鎖状四座ホスフィン配位子(dpmppp = Ph2PCH2(Ph)P(CH2)3P(Ph)CH2PPh2, tetraphos-1,3,1)を用いる複核錯体上で金属間の協同効果を利用した新反応の開発を行うことを目的としている。四座ホスフィン配位子dpmpppに支持されたロジウム2核錯体[Rh2Cl2(dpmppp)2(L)] (L = XylNC(1), CO(2))の酸素分子に対する反応性は大きく異なることが既に分かっている(Chem.Commun.2013) 。今回はこれらの知見を基に塩酸との反応を検討したところ,共に2分子の塩酸が反応したと考えられる生成物[Rh2Cl4(dpmppp)2(L)] (L = XylNC(3), CO(4))がえられた。錯体1とHClとの反応をNMR測定により反応の追跡を行ったところ,1分子の塩酸が酸化的付加して生成したと考えられる2種類のヒドリド錯体[Rh2(H)(Cl)3(dpmppp)2(XylNC)] (5a, 5b)が生成した後に,錯体3が生成していることが分かった。また,錯体2からもヒドリド錯体[Rh2(H)(Cl)3(dpmppp)2(CO)] (6)の中間体を経由して錯体4が生成した。中間体のヒドリド錯体の構造を1H{31P}, 1H-31P HMBC測定などから明らかにしたところ,錯体5aは,外側のリンが配位したロジウムに酸化的付加し,ヒドリド配位子が2つのロジウムに架橋した構造をとっていると予想された。一方,錯体5b,6は,内側のリンに配位したロジウムに酸化的付加した構造をとっていると考えられる。このように,配位子Lが反応性だけでなく,反応サイトにも大きな影響を与えていることが分かった。最近,系中に酸素が存在すると速やかに最終生成物3,4が得られるが,窒素雰囲気下中では中間体5,6が生成するのみであることも見出し,2分子目のHClが反応する際には水が生成するものと考えている。現在,詳細なメカニズムの解明や中間体5,6の反応性を検討している。
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