研究概要 |
本年度は1)放射光XAFS法による配位高分子(PCP/MOF)薄膜の構造解明とともに、2)固体表面における配位子分子(リンカー)の吸着構造研究の準備を進めた。まず、1)については、多様な機能をもつ二酸化チタン(TiO2)の単結晶表面に配向が制御された配位高分子薄膜の作製とともに、超薄膜PCP/MOFの構造解明を進めた。具体的には、有機カルボン酸類が規整吸着するTiO2(110)表面に(J. Phys. Chem. C, 112 (33), 12606-12609 (2008)J. Phys. Chem. C 113,9309 (2009) Surf. Sci. 603, 552(2009))、代表的なPCP/MOFの一つであるHKUST-1(Science, 253, 1148-1150 (1999))の薄膜をLiquid-Phase Epitaxial (LPE)法により作製した。表面XRD法やSEMによりHKUST-1はTiO2(110)表面上で<111>方位で配向が制御された薄膜に成長することを明らかにした。さらに、放射光XAFS法により、初期段階からHKUST-1が成形されることを見出した(第33回表面科学学術講演会、日本化学会第94春季年会)。 2)については、1)で示唆された配向特性の原理を明らかにするために、TiO2(110)表面におけるHKUST-1の配位子分子(リンカー)である1,3,5-Benzenetricarboxylate(BTC)の吸着構造の検討準備を進めた。具体的には、超高真空雰囲気下で清浄化したTiO2(110)表面にBTCを真空蒸着法により導入するため、新規に有機分子蒸着機構を設計・制作した。今後、調製条件を最適化し、高分解能電子エネルギー損失分光法(HREELS)や低速電子エネルギー回折法(LEED)、XPSなどにより吸着様式を検討する。
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