研究課題/領域番号 |
25410075
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山田 康洋 東京理科大学, 理学部, 教授 (20251407)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 岩塩型窒化鉄 / レーザー蒸着 / メスバウアー分光法 / 薄膜 / 磁性 |
研究実績の概要 |
前年度に行なったレーザー蒸着のための装置の改修を引き続き行うことによって、岩塩型窒化鉄薄膜の生成条件を見直した。これまで、70 Pa程度の窒素雰囲気下で鉄のレーザー蒸着を行なってアルミ基板上に窒化鉄FeN薄膜を生成すると、常に岩塩型窒化鉄と閃亜鉛鉱型窒化鉄が混在して得られていた。レーザー蒸着時の基板温度を変化させると、これらの相対比が変化し、高温にするほど岩塩型窒化鉄の生成量が増すことが明らかとなった。岩塩型窒化鉄は常温では常磁性であるが、低温では反強磁性になることが理論計算によって予想されていので、これが正しいかどうかを判断するためにも純粋な岩塩型窒化鉄を生成する必要がある。しかし、これまでに純粋な岩塩型窒化鉄に成功しておらず、閃亜鉛鉱型の混在や、格子欠陥、さらには酸化鉄の混入などが見られていた。 今年度は装置の改修によって薄膜生成時の基板温度を870 Kまで上げることに成功した。さらに、酸化鉄の混在を防ぐことに成功し基板温度を770 K以上にすると閃亜鉛鉱型窒化鉄の混入も見られなくなり、当初の目的であった純粋な岩塩型窒化鉄薄膜を得ることに成功した。このことは粉末X線回折測定から明らかになった。 しかし、メスバウアー分光法による観測では格子欠陥の影響がみられた。室温のスペクトルでは、完全な岩塩型窒化鉄ではシングレットピークが予想されるが、実際にはダブレットが現れ、わずかに格子欠陥が残っていることを示している。また、低温(6 K)の測定ではこれまでみられていた50 Tの内部磁場を示す周期的な格子欠陥は見られなくなっていることが明らかとなり、格子欠陥の程度は小さいことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閃亜鉛鉱型窒化鉄や酸化鉄を含まない岩塩型窒化鉄の生成に成功した。ただし、わずかな格子欠陥を含んでいるものが得られた。 これまでのところおおむね計画通りであり、当初の予想通りの結果が得られている。技術的な改善によって、進歩はしているものの、むしろ実験による予想外の展開による大きな発見を期待したい。
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今後の研究の推進方策 |
格子欠陥を除去する方策を見出す。 鉄薄膜生成後の加熱(アニーリング)による格子欠陥の除去については初期的な実験を行なっているが、今のところ明らかな変化は見られていない。また、基板をアルミニウムではなく、ケイ素やテフロンなどに変えて同様の窒化鉄生成を行なっているが、明らかな差異は見出されていない。 これまでに得られているわずかな格子欠陥を含んだ岩塩型窒化鉄薄膜の磁性測定を行い、格子欠陥について理解を深める。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入時に消費税分の端数によって、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品購入に充てる。
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