研究課題/領域番号 |
25410078
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
川田 知 福岡大学, 理学部, 教授 (10211864)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多核錯体 / フラストレーション / ヘリケート / キャンディーラップ構造 / ブーケ状構造 |
研究実績の概要 |
直線型のπ共役系を有し、且つ、種々の金属イオンに配位及び架橋可能な4個の窒素原子部位を持つHbpypz (= 3,5-Bis(2-pyridyl)pyrazole) を有機多座配位子とする集積型金属錯体が、特異な三重螺旋空間に二等辺三角形及び不等辺三角形型金属酸化物ナノクラスターM3(μ3-OH)あるいはM3(μ3-O)を内包する五核クラスターヘリケート型カチオン錯体を形成することをこれまで報告している。この化合物をプロトタイプとして本年度は、Ru(II)イオンにbpypz-が3つ配位したオープンスペースを有するトリス体ユニット[Ru(μ-bpypz)3]を利用し、多核ナノクラスターの抱接を試みた。多核ナノクラスター源としてCu(II)イオンを用いて合成することで、[{Ru(μ-bpypz)3}Cu3(μ3-OH){Cu3(μ3-O)Cl3}(μ2-bpypz)3](PF6)2の新規七核錯体化合物を得た。単結晶X線構造解析の結果、[Ru(μ-bpypz)3]のオープンスペースに2つのCu(II)三角ナノクラスターCu3(μ3-O)及びCu3(μ3-OH)が包摂された分子構造を有することが明らかとなった。この錯体のカチオン部分の分子構造は、これまでのキャンディーラップ型と大きく異なり、片側だけが閉じられたブーケ状構造を有する。このように、一方は閉じられ、もう他方が開いた構造を有するブーケ状空間に多核ナノクラスターをトラップできた金属錯体はこれまでにほとんど報告例がなく、新規な電子・スピン状態の発現及び観測が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特異的な磁気的スピ ンフラストレーショ ン現象とそれより導出される新規交差相関物性の創出を目的とした本研究において、新しいトポロジーを持つ多核錯体の合成に成功したことは、新たなフラストレーション系の開拓への第一歩となるため本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、得られた錯体群の物性測定を行い、交差相関物性の開拓を目指す。
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