研究課題/領域番号 |
25410080
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大澤 正久 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 専任研究員 (80280717)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 銅一価錯体 / 遅延蛍光 / 発光量子収率 / 貨幣金属錯体 |
研究実績の概要 |
昨年度の進行状況、実施計画に基づき以下のタイプの構造を有した銅一価錯体の合成及びその光特性に関する検討を行った。 1 三配位銅一価ハライド錯体の合成: ハライド(塩素、臭素、及びヨウ素)のバリエーションに加え、数種類のジホスフィン配位子を使用した。具体的には金属側に位置する置換基をメチル基、エチル基、イソプロピル基と変えた配位子を用い錯体を合成した。 2 三配位銅一価ハライド錯体の物性 (1)発光特性: いずれの材料も固体状態で高い発光効率を示した(量子収率 > 60%)。また一部の錯体において固体状態での青色発光を実現した。(2)励起一重項状態と三重項状態のエネルギー差: 全ての材料に関してエネルギー差が< 1,000 cm-1 であることが判明した。この事実により、発光が遅延蛍光性であることが裏付けられた。(3)デバイスの評価: 一般的な素子構成を有したプロトタイプのデバイスを製作して評価を実施した。各層の厚さ、あるいは周辺材料の最適化は行っていないが、輝度―電流密度で55.6~69.4 cdA-1、外部量子収率で18.6~22.5%といずれも高効率発光材料であることを裏付ける結果が得られた。またこの高い外部量子収率からこのデバイスは遅延蛍光性のデバイスであることを示唆している。 これらの値は既に実用化されているイリジウムの発光材料に匹敵する値であった。一方、固体状態で青色であった材料もデバイス化によって緑化することが判明した。このことはデバイス内で発光材料が構造変化を起こしていることを示唆しており、青色デバイス実現の障害となる。この構造変化について検討していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配位子の置換基を工夫することで、固体状態における青色発光を実現した。また合成した発光材料を用いて製作したプロトタイプのデバイスの発光効率は実用レベルであることを示した。これらの結果はDalton Trans. の特集号のカバーページに採択され高い評価を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
上述した発光材料のデバイス内での構造変化について検討していくと共に、二年間の研究から得られた知見に基づき新規配位子を合成中である。この配位子を用いて最終年度に青発光デバイスを実現する計画である。
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