研究課題
基盤研究(C)
本研究の最終目標は心の健康のための精神・神経疾患の克服に貢献することであり,そのために助成期間内に神経細胞研究用の新規な低分子プローブを開発することを目的とする。特に,従来よりも感度の高い膜電位感受性蛍光色素(VSD)の開発を目指しており,その目標性能は1 mVあたりの蛍光強度変化が1%以上であることである。25年度は,電子移動を利用した膜電位感受性蛍光色素の開発と,新規な蛍光発色団の開発を中心に研究を行った。クロロフィル類縁体を蛍光発色団とし,フェニレンエチニレンを分子ワイヤーとする新規な蛍光プローブを合成できた。この化合物の吸収極大波長は692 nm,蛍光極大波長は700 nmであった。連携研究者にこの蛍光プローブを用いた神経細胞可視化試験をしていただくことができた。その結果,弱いながら膜電位に応答した蛍光変化を観測することができた。細胞膜だけでなく細胞質にも分散してしまう欠点があることから,これを抑えるために両親媒性をより強化した類似化合物を合成した。この化合物の性能については現在試験中である。合成・試験・改良のサイクルを回すことができており,研究は順調に進行している。研究例の少ないピリジルピロール類や,光退色に強く,二光子吸収法にも利用可能なレゾルフィン類,光異性化の期待できるオキサゾロンやイミダゾロンを蛍光発色団とする新規な蛍光プローブの合成も進めている。特に,ピリジルピロール類およびそのホウ素錯体はストークスシフトが大きく,FERT型蛍光プローブ等として有望であることを見い出したことは成果である。
2: おおむね順調に進展している
クロロフィル類縁体を蛍光発色団とする新規な蛍光プローブを合成でき,これを細胞試験したところ,弱いながらも膜電位に応答した蛍光変化を観測することができた。欠点を抑えた化合物を合成し,評価試験を行っている。このように合成・試験・改良のサイクルを回すことができた。また,研究例の少ないピリジルピロール類をはじめ,他の蛍光発色団をもつ膜電位感受性色素の合成も順調に進んでいる。
引き続き、膜電位感受性蛍光色素の選択性と感度の向上を図る。様々な蛍光発色団と様々な電子ワイヤーの組み合わせた蛍光プローブを合成する。電子移動を利用するものだけでなく,励起エネルギー移動などの他の膜電位感受原理の検討も行う。また,様々なオキサゾロン類を合成し,それらの光異性化を検討する。これらの蛍光プローブとペプチドとの複合化も検討する。なお,ジャイアントリポソームに顕微鏡下で電場をかけて膜電位を生じさせるような,細胞を用いない膜電位アッセイシステムの構築ができないか検討したい。
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