研究課題/領域番号 |
25410082
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
大庭 亨 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30291793)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蛍光プローブ / 膜電位 / 神経細胞 / 超分子 / 励起エネルギー移動 / 光異性化 / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は心の健康のための精神・神経疾患の克服に貢献することであり,そのために助成期間内に神経細胞研究用の新規な低分子プローブを開発することを目的とする。特に,従来よりも感度の高い膜電位感受性蛍光色素(VSD)の開発を目指しており,その目標性能は1 mVあたりの蛍光強度変化が1%以上であることである。 昨年度に引き続き,クロロフィル類縁体を蛍光発色団とし,フェニレンエチニレンを分子ワイヤーとする新規な蛍光プローブを合成している。昨年までは細胞膜だけでなく細胞質にも分散してしまう欠点があったが,親水基を増やす改良によって細胞膜に局在化させることができた。この色素についてリポソームを利用したモデル系で膜電位を検出できるか評価したところ,既存の色素よりもやや高い感度で膜電位を検出できた。そこで,実際の神経細胞(neuro A細胞)を用いた試験を連携研究者に行っていただいたところ,同様に膜電位を検出することができた。しかし,予想以上に褪色が速く,すぐに感度が低下してしまうことがわかった。また,より長い分子ワイヤー部をもつ誘導体についてリポソームモデル系で検討したところ,膜電位はほとんど検出できなかった。以上のことから,より褪色しにくい蛍光発色団を用いること,適切な長さの分子ワイヤー部を持たせることの2点を中心に,さらに分子設計を改良し,合成を行っているところである。 別種の蛍光発色団としてピリジルピロール類も検討しており,カリウムイオン応答性の誘導体を合成することができた。神経細胞は細胞内外のカリウムイオン濃度を変化させることによって膜電位を変化させているので,神経細胞の活動を膜電位とは別の角度から検出するプローブを手に入れることができたことになる。このように合成・試験・改良のサイクルを回すことができており,研究は順調に進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの欠点を改良したな蛍光プローブを合成でき,これによって細胞膜への局在,モデル系での膜電位検出,実際の細胞での膜電位検出を実現できた。現在は,同様の性質をもち,且つより褪色しにくい化合物を設計し,合成している。種々の蛍光発色団の合成と光物性の検討も順調に進んでいる。このように合成・試験・改良のサイクルを回すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、膜電位感受性蛍光色素の選択性と感度の向上を図る。蛍光発色団としてはピリジルピロール・ホウ素錯体やジピロメタン系色素などを,分子ワイヤーとしてはフェニレンエチニレンの他,オキサゾリン等の複素環を用い,これらを組み合わせた蛍光プローブを合成する。これらの蛍光プローブと脂質などとの複合化も検討する。光異性化を利用して膜のイオン透過性などを変化させるためのプローブとしては,ジピロメタン系色素などを開発していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通り消化したが,ごく小額な残額(309円)が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分に合わせて,ただちに消化した。
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