研究課題/領域番号 |
25410088
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
高井 和之 法政大学, 生命科学部, 准教授 (80334514)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グラフェン / 反応活性 / 磁性 / 酸素 / 水 / 水素 |
研究実績の概要 |
グラフェンに対して導入したさまざまな異種化学種との間の界面相互作用を利用することにより,新規な反応性・磁性・伝導性などの機能性発現を目的として研究を行い,以下の成果を達成した. 1)端構造を持つグラフェンであるナノグラフェンおよび,酸素含有官能基を持つグラフェンである酸化グラフェンについて静磁化率測定を行い,ナノグラフェンにおける反応活性点が酸化グラフェンの7~8倍程度であると見積もられた.実際,それぞれを触媒として用いたベンジルアルコールの酸化反応において,ナノグラフェンの方が大きなGC-MS収率を示すことがわかった.一方,定量的評価には酸化グラフェン合成時のMn不純物の除去が必要であることがわかった. 2)ナノダイヤモンド上に成長させたグラフェンに対して酸素分子を吸着させて,高磁場下の電子スピン共鳴の測定を行い,g値が強い磁場依存性を示すことを見出した.これはグラフェン端構造に由来するスピンと酸素分子スピンのカップルした新たな磁気構造が形成したことを示しており,本来異方性の小さいグラフェンの状態に由来するスピンに対して,強い異方性を持つ酸素分子のスピン影響が現れたものと理解される. 3)還元グラフェン,酸化グラフェン,ナノダイヤモンド上に成長させたグラフェンに対して水分子を導入し,固体NMR測定を行うことにより,グラフェンのπ電子により生じる局所磁場を通じた水分子のH核間の相互作用を利用して,機能性の発現において重要である局所構造に関する情報をさまざまなグラフェン関連物質について評価できることが分かった. 4) グラフェンに対する水素分子導入による伝導度の変調と試料のアニール処理の相関を調べたところ,デバイス作成時に付着したホールドープを生じさせる吸着不純物を水素分子が分解除去するという間接的メカニズムにより見た目上の電子ドープが生じていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現有の超高真空STMの改造による超高真空低温伝導測定環境やGC-MSによるグラフェンの反応性評価法など研究推進に必要な基礎技術確立が順調に達成され,すでに酸素分子,水分子,水素分子などの異種物質の導入による,グラフェンの新規反応性,磁性,伝導性に関する結果が出始めている.
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今後の研究の推進方策 |
1)グラフェン,ナノグラフェン,酸化グラフェンについてアルコールの酸化反応に加えてアミンのカップリング反応における触媒活性とスピン磁性との相関を検証する.同時にNMRを用いた評価方法の確立を行う. 2)酸素分子の導入について高磁場ESRの結果のさらなる解析を行うとともに伝導度への影響を評価し,酸素―グラフェン界面相互作用による新規磁性,伝導性の発現を狙う. 3)欠陥を導入したグラフェンに水素分子を導入した際の磁気的,電荷的相互作用について調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
NMRによる反応性評価の確立に検討を要することがわかったため,各種重溶媒や石英製のサンプル管などの選定が遅れた.また,購入予定の酸化膜付シリコン基板およびSiC単結晶基板の納品が遅れたため.またこれにともない,関連する実験を次年度に行うこととなったためこれらに関わる消耗品も次年度購入となった.
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次年度使用額の使用計画 |
購入予定であるNMR関連物品,各種単結晶基板が納品次第執行する.また,次年度に行うこととなった関連する実験に関わる消耗品の購入に充てる.
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