研究課題/領域番号 |
25410095
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
上田 忠治 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (50294822)
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研究分担者 |
金野 大助 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (00361593)
恩田 歩武 高知大学, 教育研究部総合科学系, 講師 (80335918)
米村 俊昭 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (90240382)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポリオキソメタレート錯体 / 合成 / 単結晶X線構造解析 / 電気化学 |
研究実績の概要 |
本研究のキーとなるPOMである,[S2W17O61]8-の合成法を,再度見直すことによって大量に合成することが可能となった。そのため,前年度までに報告した金属置換POM[S2MW17O61]n-の大量合成も可能になった。さらに,骨格部分にある空孔部分に希土類金属イオン(放射性元素を除く)のほとんどを導入することができることも明らかにした。昨年度と同様に,IR,Raman,UV-Visおよびサイクリックボルタンメトリーによってキャラクタリゼーションを行った。特に希土類金属イオンを導入したPOMのIRスペクトルは,金属イオンの種類に依存せず,ほとんど同じ形をしていていることが分かった。 単結晶X線構造解析も進み,[S2MW17O61]n-の構造が,Wells-Dawson型であることも明らかになってきた。 [S2MW17O61]n-のアセトニトリル中における電気化学的酸化還元挙動についても引き続き詳細に調べた。さらに,既に知られているWells-Dawson型構造の[P2MW17O61]n-の電気化学的酸化還元挙動と比較したところ,同じ金属イオンを導入したPOMで比較すると,[S2MW17O61]n-の方が正電位側に還元波が得られた。つまり,[S2MW17O61]n-の方が酸化力は高いと言うことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,当初予定していたように,POMの骨格部分に,ほとんどの希土類金属を導入できることが分かった。さらにキャラクタリゼーションを行う事が出来た。本研究に関連深い内容で,国際会議4件,国内会議9件,査読つき学術論文6編にまとめることができた。さらに特許を1件出願した。また,日本ポーラログラフ学会より「志方メダル」を受賞することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によって合成した新規POMの多くから,単結晶を得ることができつつあるので,それらの構造解析を一つでも多く行って構造決定する。それによって,DFT計算から,錯体の電気化学的酸化還元挙動,光特性および磁性などの,化学的特性および物理的特性の理論的解析を進める。 [S2MW17O61]n-の効率的かつ大量合成のための条件を再度検討する。そのことによって,POMの酸化還元に及ぼす酸の影響についてサイクリックボルタンメトリーだけではなく,NMRおよびESR測定,さらにはボルタモグラムのシミュレーションを併用して,酸化還元機構の解明を目指す。それによって導入した金属の酸化還元特性を定量的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に計画していた研究内容の多くは実施出来た。しかし,予算に関しては予想よりも少額で実施出来たことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,計画の最終年度である。そのため,本研究の総まとめとして学会発表および論文作成に重点を置く予定にしている。そのため,平成26年度に使用しなかった予算と平成27年度の予算と合わせて,発表旅費や論文校閲費などに重点的に使用する予定である。
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備考 |
2014年11月15日に日本ポーラログラフ学会「志方メダル」の受賞。受賞タイトルは「ポリオキソメタレート錯体および金属錯体の生成反応機構および酸化還元反応機構に関する電気分析化学的研究」。
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