本研究では、塩化白金触媒による炭素骨格変換反応を基軸としたアズレン縮環系ヘリセン(AZH)類を創製し、その物理化学的諸性質の解明と新規材料としの応用研究を目指す。計画としている研究項目は、①アズレン縮環化合物の効率的合成法の開発、②AZH誘導体の合成とその物性評価、および③AZH誘導体の電子受容体材料としての応用研究の3つである。 本年度は項目①の研究成果として、AZH-1~5に加え、新たに5員環部にホルミル基を有するAZH-6の合成にも成功した。各AZH類のX線結晶構造解析を行った結果、電子吸引基としてトリフルオロアセチル基を有するAZH-4と、ホルミル基を有するAZH-6はアズレン分子の大きな双極子モーメントを打ち消し合うようにhead-to-tail型のスタッキング構造を形成することが分かった。この際、AZH-4は右巻き(P体)と左巻き(M体)が交互に積層しているのに対し、AZH-6ではP体又はM体同士でhead-to-tail型二量体を形成し、これを基本単位とする積層カラム構造を形成していることを明らかとした。項目②の研究では、特徴的な集合体を形成するAZH-4とAZH-6と、ヘリングボーン層を形成するAZH-1の近接2分子間の正孔・電子移動度(電荷移動確立(W))の理論計算を行った。その結果AZH-4に関しては電子輸送能に優れ、AZH-6はバイポーラ―性を有することが示唆された。 項目③の研究として各AZH誘導体のn型材料としての機能評価を実施した。ドナー材料としてポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)を用いて、それとの混合薄膜かならなるバルクヘテロ構造を作成して評価した結果、AZH-1よりもAZH-4は短絡電流密度が優れていたが、変換効率が低い結果を与えた。
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