軸配位子に非対称性を導入した系ではFe(Pc)(CN)Clからなる電荷移動錯体でのみ誘電緩和現象が観測された。局所的に分子間相互作用の不均化が存在している可能性が指摘される。これは分子ユニットへの非対称性の導入が本研究目的に有効な手段となることを意味する一方で、軸配位子への非対称性の導入では分子間相互作用の不均化を誘起するに十分な効果を得られないことも意味している。 そこで、Pcの4つの外周ベンゼン環のうち隣接する2つずつのベンゼン環に対して非対称性を導入した配位子の合成も行った。その際、Pcの類似配位子であるtbpを用いた電荷移動錯体も作製し、環状配位子の変化による電気磁気物性変調を評価した。
|