研究課題
基盤研究(C)
超伝導磁束量子ビットと結合させて量子メモリーとして機能させる量子メモリーQubitとして安定な有機三重項分子を用いるが、超伝導磁束量子ビットの動作する20mK(0.0139 wavenumber)で量子状態を初期化するために微細構造分裂(D値)の大きな基底三重項分子を準備する必要がある。基底三重項ニトロニルニトロキシドラジカルの中で最もD値の大きなジラジカル1(D=-0.0655 wavenumber)と比較的大きなD値をもつジラジカル2(|D|=0.025 wavenumber)を準備した。量子メモリーとして機能させるためにデコヒーレンス時間(スピン-スピン緩和時間)は長い必要があるので、デコヒーレンスの大きな原因の一つであるジラジカル間の磁気的な相互作用を小さくするために反磁性のホスト分子の単結晶に希釈させることを試みた。適切なホスト分子として、ジラジカルのNO基をCO基に置き換えた骨格のよく似た分子がジラジカルを取り込むことがいままでの研究でわかっているのであるが、ジラジカル2の構造に対応したケトン分子3の合成に成功した。分子3にジラジカル1,2を希釈させた単結晶の育成を試みたところ、ほぼ望みの濃度で希釈単結晶を育成することに成功した。ホスト単結晶中でのジラジカル1,2の微細構造定数(D値)を知るために、希釈単結晶をすりつぶしたパウダーのESRスペクトルを観測した。スペクトルシミュレーションの結果、室温でジラジカル2のD値は0.0182 wavenumberであった。1の方は2種存在しD値は0.0618 wavenumberと 0.058 wavenumberであった。いずれも、グラス中のD値よりもすこし小さくはなったが今後、この系を超伝導磁束量子ビットと結合させる実験を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
当初、予定していたホスト分子の合成、希釈単結晶の育成に成功し、希釈単結晶をすりつぶしたパウダーのESRスペクトルの解析から室温での微細構造定数(D)の決定に至っている。
希釈単結晶ESRスペクトルの解析から微細構造テンソルを決定し、ジラジカルのスピンの性質を解明する。得られた希釈単結晶を超伝導磁束量子ビットと結合させる実験を行っていく。
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http://www.qcqis.sci.osaka-cu.ac.jp/~nakazawa/