研究課題
安定な基底三重項有機分子を磁気的に希釈させた単結晶を超伝導磁束量子ビットと結合させて量子メモリーとして機能させる研究を行っている。昨年度までに、超伝導磁束量子ビットの動作する20mKで量子状態を初期化するために必要な大きな微細構造定数(D値)をもつ基底三重項有機分子の磁気的希釈単結晶を育成し単結晶ESR法により単結晶の外形に対する微細構造テンソルを決定していた。超伝導磁束量子ビットと強結合させるためには単結晶を超伝導回路に良く接触させる必要がある。超伝導回路からの磁束の空間的広がりは数μm程度なので、結晶中のより多くの三重項分子を結合させるために結晶表面の平坦化を研磨によりおこなった。有機結晶はもろいため工夫を必要としたがラフネス1μm以下の平坦化に成功した。現在、この結晶を使って超伝導磁束量子ビットとの強結合実験を進行中である。この研究と平行して今年度は量子情報処理研究の一環として、電子スピン‐核スピン量子ビット系とみなせる有機ラジカルの希釈単結晶を用い量子状態制御の研究をおこなった。多量子ビット系に対して系の一部だけを操作して系全体を制御するグローバル制御の理論的研究をおこなった。1電子‐2核スピン量子ビットであるラジカルの希釈単結晶を準備し単結晶ESR法によりgテンソル、超微細構造テンソルを決定後、電子スピン量子ビットだけを操作し2つの核スピン間の制御NOTゲートを実行するマイクロ波GRAPEパルスを最適化法により求めた。制御NOTゲートの操作時間を固定した場合のゲートの精度に対する、結晶に印可する外部磁場の方向依存性を計算することによって精度の悪くなるときのテンソルの条件を考察し量子操作に適した外部磁場方向を明らかにした。
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Quantum Inf. Processing
巻: 14 ページ: 2435-2461
10.1007/s11128-015-0985-1