光合成を模倣して光エネルギー変換システムを構築するためには色素分子の空間制御が変換効率を向上させるうえで重要な鍵であり、さまざまな手法で色素分子の空間制御が検討されている。DNAは、色素組織体を構築するための鋳型材料としても利用でき、希望する数の色素分子をその立体配置を制御して配列できるという他の鋳型材料にはない特徴を持っている。 高い蛍光特性と熱安定性をもつ色素であるジケトピロロピロールに核酸塩基レセプターであるサイクレン亜鉛錯体を連結した分子(DPP)とチミジンのみからなるオリゴDNAとによる色素分子集合体の形成について検討し、UV滴定、ゲルろ過クロマトグラフィー、CDスペクトルにより、DNAの添加によりサイクレン亜鉛錯体部位がチミンと選択的に結合し、ジケトピロロピロール部位が互いに会合した集合体を形成し、かつその集合体はDNA鎖長に応じた長さの集合体が形成されることが示唆された。 DPPとDNAとによる色素分子集合体を構築して、それらを金電極上に固定化した修飾電極を作製してその光電変換特性について検討を行ったところ、DPP集合体を固定化した電極からの光電流は犠牲剤および集合体を形成するDNAの鎖長により制御できること明らかにした。 さらにDPPに対して電子アクセプターとなるナフタレンジイミドにサイクレン亜鉛錯体を連結した分子(NDI)とDNAによりNDI集合体を構築し、DPP集合体と共に固定化したヘテロ接合型電極を作成し、光電荷分離による光電応答の高効率化を検討した。その結果、DPPとNDI同士は光電応答を阻害する電荷分離錯体を形成するが、DNAにより集合体にすることにより電荷分離錯体の形成を抑制することを見出し、電荷分離錯体の集合体を固定した電極に比べ50倍の光電応答を得ることに成功した。
|