研究課題/領域番号 |
25410104
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
仙北 久典 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50241360)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 二酸化炭素の固定化 / 有機電解合成 / カルボン酸 / ベンジルアルコール / フェニル酢酸 / 炭素炭素結合形成 / マグネシウム陽極 / 一段階合成 |
研究実績の概要 |
初年度の反応条件の検討結果を踏まえて、今年度は種々のベンジルアルコールを用いて汎用性・適応範囲についての検討を行った。その結果、支持電解質として0.1 MのBu4NBF4を含むDMFを溶媒として、陰極に白金板、陽極にマグネシウム棒を備えた一室型セル中、二酸化炭素をバブリングしながら反応温度0℃において電流密度20 mA/cm2とした定電流電解法により6 F/molの電気量を通電するという最適条件下において芳香環上のパラ位にエステル置換基(CO2Me)あるいはシアノ基(CN)を有するベンジルアルコールを基質としたところ、それぞれ73%、78%の単離収率で相当するフェニル酢酸を得ることに成功した。両基質のベンジル位にメチル基を有する第2級のベンジルアルコールを基質に用いたところ、転化率はやや低下するものの相当するフェニルプロパン酸がそれぞれ60%、59%の単離収率で得られることを見出した。芳香環上のオルト位にエステルを有する基質を用いても55%の単離収率で相当するフェニル酢酸を得ることに成功したが、メタ位にエステル置換基を有する基質では反応は殆ど進行せず、77%の原料が回収された。また、パラ位のフッ素原子やフェニル基も本反応を進行させる置換基としては効果的でないことも明らかとなった。また、パラ位にトリフルオロメチル基を有するベンジルアルコールでは、既に知られているベンジル位の脱フッ素を伴うモノカルボキシル化反応が優先的に進行し、目的の反応は進行しないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、二酸化炭素の有効利用法の開発の一環として、電子を試薬として用いる有機電解の手法を用いることにより二酸化炭素とアルコールから炭素数が一つ増加したカルボン酸を効率的に一段階で合成することを目的としてる。 当該年度には前年度の最適反応条件の検討結果をもとに汎用性・基質適応範囲の検討を行い、パラ位もしくはオルト位のエステル基やシアノ基が本反応の進行には不可欠であること、メタ位のエステル基やパラ位のトリフルオロメチル基やフェニル基、フッ素原子は本反応には効果的でないことを見出しており、当初の計画通りに研究が進行している。また、次年度には引き続きアリルアルコール類の基質適応範囲の検討と、本研究成果を用いる電子吸引性置換基を有する炭酸ジベンジルのダブルカルボキシル化反応の検討に当初の計画通り着手する予定であり、以上のことから、本研究はおおむね計画通りに進行していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
アリルアルコールおよびベンジルアルコールを用いた汎用性・基質適応範囲の検討を行うとともに、従来の炭酸ベンジルのカルボキシル化反応との連続化を検討し、ワンポットでのダブルカルボキシル化の達成を目指す。すなわち、電子求引性置換基を芳香環上のパラ位に有する炭酸ジベンジルを用いて本研究の反応を行うと、従来型の炭酸ベンジル類の電解固定化が進行するとともに、電解還元によって脱離基として働いた炭酸ベンジルイオンによる本研究の反応が連続的に進行し、一分子の炭酸ジベンジルに二分子の二酸化炭素を固定化し、二分子のフェニル酢酸をワンポットで合成することが可能となる。実際に、電子求引性基をパラ位に有する炭酸ジベンジルを合成し、従来法と本研究の反応の連続化について検討を行い、炭酸ジベンジルから収率200%でのフェニル酢酸合成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度3月までに物品は購入済であるが、システム上支払完了が今年度4月になってしまうため形式的に繰越が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究経費は既に前年度3月までに使い切っており、使用計画に変更はない。
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