前々年ならびに前年度の結果を踏まえ、最終年度には、従来法である炭酸ベンジル類のカルボキシル化反応と当該研究による新規知見の連続化によるワンポットダブルカルボキシル化反応について検討を行った。すなわち、芳香環上に電子求引性置換基を有する炭酸ジベンジルを合成し、従来型である炭酸ベンジル類の二酸化炭素固定化反応に応用すると、炭酸ジベンジルの二酸化炭素電解固定化が進行するとともに、電解還元によって脱離基として働いた炭酸ベンジルイオンによる本研究の反応が連続的に進行することが期待できる。その結果、一分子の炭酸ジベンジルの2つのベンジル基に二分子の二酸化炭素をワンポットで固定化することが可能となり、二分子のフェニル酢酸誘導体を一段階で合成することが可能となる。反応条件等を種々検討した結果、基質濃度、反応溶媒と反応温度が重要な因子となることを見出した。最終的に、芳香環上にエステル基を有する炭酸ジベンジルを基質として用いた場合、反応溶媒にDMSO、基質濃度0.1 M、反応温度は室温のまま制御しない(ambient)とした場合、10 mA/cm2の電流密度において12 F/mol(3当量)の電気量を定電流法により通電したところ、177%の収率で相当するフェニル酢酸を得ることに成功した。芳香環上の置換基をシアノ基にした場合、またベンジル位にメチル基を有する第二級のベンジルアルコール由来の炭酸ジベンジルを基質として用いた場合にも168%から180%の収率で、相当する一炭素増炭カルボン酸を得ることに成功した。全体として、3年間の研究期間におおよそ計画通りの成果を得ることができた。
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