研究課題/領域番号 |
25410107
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
柳澤 章 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60183117)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機化学 / 触媒・化学プロセス / 不斉反応 / エノラート / キラル触媒 |
研究概要 |
平成25年度は、効率的な銀(I)メトキシドの発生法と、それを用いた銀(I)エノラート化合物の調製法について検討した。単純な環状ケトンのエノールエステルを基質に用い、マンニッヒ型反応を評価系として銀トリフラートとメタノールに対して様々な三級アミンの添加効果の検討を行ったところ、Hunig塩基が最も効果的であり、純度の高い銀(I)メトキシドおよび銀(I)エノラートが調製できる事を見い出した。 次にこのようにして最適化した銀(I)エノラート発生法を用いて、触媒的マンニッヒ型反応の開発を試みた。メタノールの存在下に触媒量の銀トリフラートとHunig塩基を作用させ、求電子剤としてイミンを添加したところ、目的とするマンニッヒ型生成物が収率良く得られた。この結果から、反応系中にメタノールを添加することにより、銀(I)メトキシドと銀(I)エノラートが効率的に再生することがわかった。 当該年度は本研究をさらに先に進め、開発した触媒的マンニッヒ型反応を不斉反応へと展開させた。すなわち、光学活性ホスフィン化合物を銀(I)メトキシドの配位子として用いて触媒的マンニッヒ型反応を行ったところ、その生成物に極めて高い不斉誘導が生じた。そこで、様々なケトンのエノールエステルとイミンとの組み合わせを用いて本反応における基質の一般性を検討したところ、ジアステレオ選択性とエナンチオ選択性に関して、いずれも良い結果を得た。 また、このキラル銀(I)エノラートの触媒的発生法をアゾジカルボン酸ジエステルを求電子剤とする不斉αーアミノ化反応に適用したところ、優れたエナンチオ選択性が発現することがわかった。 この不斉マンニッヒ型反応と不斉αーアミノ化反応については論文発表を行った。さらに当該年度はこの触媒システムを利用した不斉ニトロソアルドール反応および不斉アリル化反応についても研究を着手し、その予備的成果を学会で発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、平成26年度の研究計画としていた銀(I)メトキシドと銀(I)エノラートの不斉反応への展開を、既に平成25年度にスタートでき、一部の成果を論文および学会で発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度成功したキラル銀(I)メトキシドとキラル銀(I)エノラートの発生法を、さらに他の不斉反応(アルドール反応、αートリフルオロメチル化反応等)に適用していく。また、既に検討を開始した不斉ニトロソアルドール反応や不斉アリル化反応については基質の一般性を含め、実用性の観点からより詳細に検討を行う。さらに、前年度に開発した銀(I)触媒システムを使って、ケトンからの銀(I)エノラートの直接的発生が可能かどうかについて検討する。ケトンと銀(I)メトキシドから対応する銀(I)エノラートを効率的に発生させるためには、ケトンのα―水素が十分に酸性である事に加えて、銀(I)メトキシドの塩基性が求められる。しかしながら、エノールエステルを経由しない直接的な銀(I)エノラート発生法は、続く触媒的不斉反応の開発にも関わる魅力的な手法であるので、平成26年度から検討を行いたい。まず、エノール化の比較的容易なβ-ジケトンを基質に選び、銀(I)メトキシドを用いて銀(I)エノラートの調製を試みる。
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