研究実績の概要 |
最終年度である平成27年度は、平成25年度に開発したキラル銀(I)エノラートの触媒的発生法を使って、メタノールを求電子剤とする不斉プロトン化反応について研究を行った。α位に置換基を持つ環状ケトンのエノールトリフルオロアセテートを基質に用い、反応条件の最適化を試みたところ、光学活性ホスフィン配位子としてBINAPが、またアミンとしてHunig塩基が最も効果的であり、生成物である光学活性ケトンの単離収率およびエナンチオ選択性の両方において良い結果が得られることがわかった。さらに本プロトン化反応において、γ位にメチル基を有するプロキラルなγ,δ-不飽和δ-ラクトンを基質に用いると、分子内にエステル基のある光学活性ケトンが良好なエナンチオ選択性で得られることが判明した。この不斉プロトン化反応については学会発表を行った。 一方で、平成25年度に研究をスタートさせた不斉ニトロソアルドール反応とアルデヒド類の不斉アリル化反応に関しては、当該年度においても引き続き研究を継続させ、不斉ニトロソアルドール反応では、目的生成物である光学活性α-アミノオキシケトン体をより純度良く得る手法を確立した。また、不斉アリル化反応については求電子剤としてイミン類も反応性を示す事がわかった。これらの反応については論文発表の準備を行っている。さらに、不斉アリル化反応の手法を応用することにより、アルデヒド類の不斉アレニル化反応が起こる事も見出し、学会発表を行った。 また、ケトンからの銀(I)エノラートの直接的発生法については、最終年度においてもエノール化の起こりやすい基質を用いて検討を行ったものの、良い結果は得られなかった。
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